探偵と渦巻くもの
過ちが起きた時に、胸に渦巻くものは、なんだろう。
もっと出来たはず。
もっともっと出来たはず。
上手くいかなかった後悔か。
あの時に気づくことが出来たなら。
誰かが気づくことが出来たなら。
気づくことが出来なかった不甲斐なさか。
誰もしてくれないならば。
何か出来たはずなのに。
憎悪による決意か。
どうしてこうなってしまったんだろう。
なぜこうも、うまくいかないのだろう。
衝動による嘆きか。
探偵とは、そういった渦に巻き込まれ、思うことも身を裂かれそうになることも、あるかもかもしれない。
事件とは、この渦の中にあり、欲するなら、解決するなら、その中に飛び込むことができるのが、探偵と言うものだろう。
パーティーが始まるまで、おとなしくしておくように川中さんに言い含められ、なんとなくロボ和歌子初号機に事件について、話をして時間を使うことにした。
「あそこまでフラグを建てて、結局進展というべき進展がないと言うのは、どうなんでしょうか」
「容疑者らしい容疑者も割り出せる訳はないから、しょうがないと思う」
「やっぱり、好感度不足が進展がない一番の要因ですね」
「あぁはいはい」
いつもよりも、小洒落た衣装をつけていながらも、平常通りのロボ和歌子初号機の軽口にも安息してしまうあたり、まだ迷子の心境というものは、尾を引いているのかもしれない。
「冗談はさておき、所長は人が人を殺すとしたら、計画性を考えますか、それとも衝動的な犯行を疑いますか」
「半々としか言いようが無いんだけど」
計画的に復讐を遂げることもあれば、反射的に憎悪で手を染めることもあるだろう。
「そうですか、頼りになりませんねぇ」
「衝動的だろうが、計画的をなんで気にするの?」
「計画的に殺すならば、今日のパーティーも中々狙い目だと考えますよ、疑いを反らせる算段がつきやすいですし」
確かに容疑者が増えるのならば、自分への疑いを減らせるのだろう。
「でも、多数の目がある分やり辛いと思うこともあるんじゃない」
「まぁ確かにその点はありますが、計画的に殺すならば、逃げ道の確保もできます」
「確かに孤島だしね」
衝動的に殺した場合と計画的に殺した場合逃げるということまで考えると、計画的に殺すと言う事のほうが、お嬢様を殺すという点ではやり易いかもしれない。
「そして犯人は衝動的に殺せないという可能性もあります」
衝動的に殺せないというのはなんだろうか。
「衝動的に殺すためには、ターゲットの近くでの生活が必要です、計画的に殺すためには、殺したあと逃げて怪しまれず、自分の生活へと違和感無く戻ると言う事です、つまり普段はターゲットの近くに住んでいない人物が容疑者である確率が高いと考えられるのです」
「なんか賢い」
「問題があるとすれば、衝動的犯行か計画的犯行か見分けられるかが問題ですね」
最後の一言で結局のところ進展と言う進展がないのだが、もしかしたら今日のパーティーで渦巻くものの一端が忍んでいる様な気がした。
容疑者はお嬢様の親族なのかもしれないのだから。




