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探偵と枯れ木

 三人よれば文殊の知恵。


 一人ではなく、誰かの助けがあれば、困難な問題も解決できうる妙案が生まれるかもしれないということだ。


 団結の力、集団というのは、一つ一つの力が弱いものが集まるとき、それは巨大な力となりうる。

 そして、それはしばしば、推理小説にだって見受けられる。


 探偵団という名の集団である。

 彼らはその数により、情報をあつめ、事件を解決へと導いてくれる。


 探偵団、一人ひとりは、探偵ですらないことも多い。

 それでも、彼らが持ってくる情報は事件解決という糸口を与えてくれる。


 探偵ではないからこそ、できるといえばいいのだろうか、それこそ文殊の知恵のように、天啓を与える彼らは、名探偵ではないが、名探偵に匹敵しうるのかもしれない。


 僕も数というものに頼り、もしかしたら探偵団をつくってしまえば、僕が頭を悩ませている事だって、解決するのかもしれない。

 その前に、友人、知人が少ない僕にとっては、それは無理であるというのが、分ってはいるのだけれど。


 文殊の知恵のような良い案を思いつくには、あと一人たりないのは重々承知しているのではあるが、ロボ和歌子初号機のハイペックがあれば、探偵団のとまではいかなくとも、少なくとも僕三人分ぐらいのスペックは、ゆうにあるはずなのだから、僕かロボ和歌子初号機のどちらかが、妙案を閃いてもいいと思うのだけど、なかなか上手くいかないものである。


「何か良い案ないかな」

「暗号の正解にも到達できない、私に何を求めているんですか、所長は」

「この状況をどうにかできる妙案」

「普段の所長の行いだとエロさだと推測したのですが、やはり私はまだまだのようですね、そういうわけで思いつきません」

「せめてあと一人いればね、三人寄れば文殊の知恵っていうし」

「まぁ結局人員をふやしたところで、お嬢様が生きている以上お嬢様の殺人事件というのは、ありえないのですから、これ以上枯れ木をふやしても賑やか以前に邪魔なだけです」

「枯れ木というのは、言わなくても僕のことだよね」

「所長が枯れ木、または木の役だった経験から何かこの手詰まりのような状況をどうにかできるような考えはないんですか?」


 このように先日の暗号の自虐ネタや、僕をおちょくるような言動をとるという、ハイスペックな存在であるのに、妙案は考えつかないようである。


 和歌子お嬢様のお姉さんの暗号の件から数日、和歌子お嬢様からもらった多すぎる報酬に悩んで数日、あいも変わらず、お嬢様が殺されるという出来事なんて、やはり起こっていない。


 結局のところお嬢様が死んでいない、殺人事件を解決する妙案という妙案を、僕とロボ和歌子初号機では思いつかないし、これはいつものように、不毛の会話である。


 本来であれば、その不毛さが、メイドである川中さんのまた働いていないんですかとの小言と侮蔑のようなまなざしを受ける原因でもあるのだが、今回は違った。


 不毛さが飛ぶように、状況を打破するように、お嬢様からの呼び出しを受けた。


「喜んでください、この屋敷で近々パーティが行われ、そして私が殺されるかもしれない」


 呼び出しをうけ、お嬢様の部屋にはいると、殺されるかもしれないという状況に、お嬢様は頬をそめ、興奮している様子を隠そうともせず、長い髪がまわっている。


 探偵である以上、妙案を思いつかずともいずれ事件はやってくる。


 何も妙案も良案もひらめかない凡人のような、学芸会では枯れ木のような僕の経験が役に立ったとすれば、和歌子お嬢様の興奮をみつづけ、立ち尽くすことだった。


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