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探偵と報酬

 探偵というのは、実生活をどうしているんだとばかりに、事件に巻き込まれて、事件に首を突っ込んでいたりする。

 学生や若者の場合、学校生活に、支障をきたすのではないだろうかと言うぐらいに、巻き込まれている。

 まぁ学生時代では、犠牲になるのは、勉強と就職活動と、いやもしかしたら対人関係だってそうかもしれないが、彼らは大人になっても、それを、それに類する何かを、手放して、大人の探偵と、なってしまいそうだ。


 彼らだって必要と言うことは、わかっているのだろうが、それでもわかっていても、手放している様に、思えてしまう。


 だからこそ、だからこそ、あの様な台詞が言えるのだろうと思っていた。


『報酬は、この謎で十分です』


 まったくもって、実生活を投げすてたとしか、色々と、手放しすぎて、どうかしてしまったのだろうかと、こちらが、心配してしまうような台詞である。


 謎よりも、現実的に報酬をもらったほうがいいだろうと、考えていた。


 格好良さよりも、真実より、何よりも、現実だろうと、少なからず思っていたし、微かながらも馬鹿にもしていた。


 でも今ならば、あれは、僕が見習うべき、彼らなりの美学であり、強さなのかもしれないとまでも思えるぐらいに、素晴らしいものかもしれない。


 鞠さんの件で、まがなりにも謎を解くという、恥を披露した報酬と言うことで、川中さんが、和歌子お嬢様から、茶封筒を預かっていると、こちらにその妙に立体的な茶封筒を僕に渡そうとした。


 何故この茶封筒は、重圧感を解きはなっているのだろうかと、川中さんに聞こうとしても、上手く声すらもでない。


「早く受けとってくださいよ、私をあなたと同じように、暇だと勘違いしているのなら、その認識をとっとと、改めて、さっさと受けとってください」


 川中さんが、涼しくなんでもないように、回覧板のような気軽さでいってくれるが、そのような気軽さを押しつぶしていくような、重さが、茶封筒に宿っている。


「あの、なんですかこれ」

「報酬だって言いましたよね」


 言いましたとも、いっていましたけれど、その重さというか、厚さとかが、やったことに対してのものと違いすぎている。


「あの報酬にしては多すぎる気がしますので」

「適正価格とか、あるんですか探偵に、まぁその前に返すとかないので、いい加減受けとってください」


 茶封筒を強引に押し付けるように、手渡された茶封筒は、目で見るよりも、遥かに存在感を発揮して、重さを伝えてきた。


『報酬は、この謎で十分です』


 謎解きをしたことで、得られる収入と言うものは、微々たるもののほうが、格好良く、好ましく、そして、罪悪感を生まず、ただ晴れ晴れした気持ちになるほうが良いと言うことだろう。



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