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探偵と推理

 此処最近と思ったら、そう言えば、いつだって、同じ様に、大体の女性に罵倒されていた。

 そして、やはり和歌子お嬢様のお姉さんの鞠さんの僕に向けた、第一声も、罵倒めいた言葉である。


 病弱そうな、儚げなとも言うべき顔立ちに反してと言うよりも、病弱そうな彼女だからこそとでも、言うべきだろう。

 声は実にハッキリと耳から聞こえて、心に突き刺すようであった。


「はい、失格」


 和歌子お嬢様と、そのお姉さんの、鞠さんがいる部屋の前で、ウロウロしながら、入るのを戸惑っていた僕を、緑川さんとロボ和歌子初号機に、とっとと入れとばかりに、押し出され、よろけながら入ることになった。


 川中さんの、何をしているんですかという、視線が飛ぶよりも早く、出会い頭、一発目に指差し確認のお手本の様に、キッチリと僕を指差して、失格と声に出した。

 合格するよりも、不合格になるよりも早く、結果がでた。


「鞠姉さん、だから立川さんは、私が雇ったので、失格とかは、鞠姉さんが、決める事ではありません」

「和歌子、決めることでは無くても、口は出すわよ、いつまで、お金をつぎ込む気よ、こんな馬鹿げた事に」

「お金がある限りです」

「貴女が死ぬまでって事でしょ、まったくもって馬鹿のする事よ」

「鞠姉さんに言われたくないのですが、あと私が死ぬまででは無く、私が死んだ事件が、解決するまでです」

「もっと馬鹿じゃない」

「まぁ、立川さんの探偵力をしれば、鞠姉さんも、認めざるをえないでしょう」


 いや、そこまでの探偵力というのは、ないと思うのだけど、そもそも探偵力というのは、なんだろうか。


「まぁ鞠姉さんが、認めなくても立川さんが探偵であることは、変わりませんがね」

「じゃあとりあえず、立川さんとやらが、あの暗号を解けないなら、せめて、くだらない事にこれ以上お金をつぎ込むのは辞めなさい」

「分かりました、その場合は、糸目をつけないのは辞め、常識の範囲としますが、まぁありえませんが、立川さんお願いします」


 和歌子お嬢様が、期待を込めて、促した。

 探偵力というのが、わからないけれど、微妙に音がなりそうな身体を前に押し出すように、一歩踏み出して、お嬢様が期待をしている答えをまずしなければいけない。


 恥ずかしいけど。


「鞠さんにとって、泡沫の夢でしたね、僕の推理が正しければの話ですが」


 あぁ、もうこれは恥ずかしい。

 緑川さんや川中さんは、笑っているのが、わかる。

 鞠さんだって、嘲笑を隠そうともしない。

 唯一、喜んでいるのは、和歌子お嬢様ぐらいなものだ。


「とりあえず、掴みはOKみたいですね、所長」


 その評価は、全然嬉しいとも思わないし、此処からが、本番なんだけど、まぁ恥ずかしさの半分は、乗りきったのかもしれない。


「まぁパフォーマンスだけは、評価してあげるわ、どうせあの暗号解けていないでしょうし、忙しいから帰るわよ」

「いえ、あの暗号ならば解けました」

「じゃあ答えてみて、どうせ間違いだろうけど」

「はい、あの問題文だけで、解こうとすると必ず間違う様になっているんですよね」


 鞠さんが、僕がどう答えようとも、間違えると断じる。

 だけども、それはわかっている。


「一行目に、『いろはにほへと』2行目には、『あいうえお』の文字が書かれた文字、3行目には、大きなバツという見かけだけは、暗号めいて、簡単そうに見せていますが、それだけなんです、ですから、問題自体ではなく、出題者の意図を考える事が、必要になってきます、そして鞠さんの意図は、査定する事ではなく、探偵を辞めさせるもしくは、和歌子お嬢様にこれ以上の浪費をさせない事です」


 適当な文字を適当に配置し、適当に作られたもので、暗号文っぽく見えれば、それで良かった。

 あとは適当に答えを後付けで、適当に複数考えればいい。


「どうして暗号文だけで考えなかったの」

「忙しい貴女が、わざわざ暗号をつくるわけがない、そもそも常識的に考えて、暗号文を、作る暇はない、それならば、探偵を辞めさせるためだけに、適当にこの文を仕込んだと、考えたんですが、この推理間違えてますか」


 マトモな推理ではないと自分で、わかっている分、喉のひりつきや、異様な恥ずかしさが、身体を駆け巡る。


「まぁ探偵役には、なるんじゃない」


 呆れるようにではあったが、どうやら正解だったようだ、いや正解としてくれたといった方が、正しいのかもしれない。


 鞠さんが、部屋を出て行った途端に、疲れも押し寄せてきた。


「お疲れ様です、立川さん、見事な推理でしたよ」



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