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探偵とバージョンアップ

 人の噂など75日とよく言われているが、噂の残した爪痕というものは、75日たったとしても埋まるものではないと思う。


 目立たぬようになっているだけか、気づかぬふりをしているか、はたまた、触れられぬような逆鱗となっているか、それを考慮して上手く対処して付き合えるのが人間関係というもので人付き合いの一つだろう。

 そんな人付き合いとか考慮しないものがいたら、孤独なものへとまっしぐらだが、探偵というものは真っ当な人間関係を気にすら止めぬように、踏みにじる。

 正しく探偵というものを目指すならば、その事も覚悟せねばならないのかもしれない。


 そして幸か不幸か僕は良好な人間関係を築けるほどに人と付き合えているとも思えないので、その覚悟というものは案外しなくても良いという、その点は探偵として向いているかもしれない。


 まぁそんな点で向いていると言うのは、随分と皮肉というかどうなんだろうかとも思う事も出来るし、それに人付き合いを考慮していない、代表格が僕の助手となっている、ロボ和歌子初号機である。


 人付き合いを考慮しないというか、聞き辛かったり、わざわざ一言多かったり、人を傷つけるという所業を平気でやってのけるロボ和歌子初号機が蒔いた種というか、無慈悲にふるわれた爪は、僕自身あらぬ噂と事故そして予期せぬものまで、残していった。


 その出来事からのダメージも抜け切っていないのは、75日もたっていないからなのか、それとも僕が打たれ弱いだけなのかはわからないが、少なくとも、よろよろながらも立ち上がり、乾ききったような笑いを浮かべるまでには回復したようだ。


「所長、今日はいつになく最高の笑顔ですね」

「それが本当なら、その目が節穴か僕自身気づかなかったけど、一切笑ってないんだろうね」

「バージョンアップしたばかりの私の目が、節穴というのもおかしな話ですので、所長がじめっとした人生を歩んできたんでしょうね」


 僕がじめっとした湿っぽい人生を歩んできたかどうかはともかく、ロボ和歌子初号機はどうやらバージョンアップを果たしたらしい。


「何か機能でも増えたの」

「分かりやすくいうと画質がよくなりました」


 分かりやすく言われて、性能がショボく聞こえたような気がするし、携帯の機能でも、僕の中ではアドレス機能の充実ばりに不要なものだ。


「驚いて声もでませんか」

「あぁうん」

「今までよりも遠くのものが鮮明に見えるので、世界が変わったような感覚です」


 訂正、なにかレーシックでも受けたような情報の所為で驚きたいのに、余分な情報がそれを邪魔してしまう。


「しかし、バージョンアップしてすぐに気づかないのは、名探偵とか言われていい気になっていた証拠とも言えますね」

「いい気にはなっていないんだけど、それに気づけというのは無理だよ」


 何処をどうやれば、バージョンアップしたかなんて気づけるというのだろうか。


「所長、探偵は気づけなかったじゃ済まされないものですよ、些細な変化、些細な違和感に気づくという事は探偵として基本ではないですか」


 まったくもって、正論だと思うが、微妙に悔しいのは何故だろうか。


「まったく、名探偵というのは難事件がつきものなんですから、それを所長が解決するためのお手伝いのバージョンアップでもあるんですよ、だから所長もショボく立ち止まってないでさっさと進歩して下さいよ」


 励ましてくれているのだろうか、人間関係を考慮していない代表格のような、ロボ和歌子初号機が本当にばアップしたのは、多少なりとも考慮してくれたかのように感じる。


 だけども僕は気づく。


 名探偵ではないけれども、そもそも僕に今だ残る爪痕の原因は、この探偵助手の行動が原因なのだからそこは謝るべきではないだろうか。


「そうだね、努力するよ」


 でもまぁ、人間関係ではそのような事良くある事だ。


 僕とロボ和歌子初号機の探偵と探偵助手の関係としては良くある事だ。


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