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探偵と期待

 変質者な少女から実に処分に困るものを押し付けられた気がしてならないのは、数日たってからだ。


「エロ本の事は笑って済ませましょうよ、彼女が悪い訳ではないです、9割がたエロ本に興味がある所長が悪いんですから」

「そんな責任の割り増しやめてくれない」


 僕からしたら、明らかな濡れ衣ではあるものの、否定したはずなのに、

 否定した事などお構いなしなドロ沼に嵌ってしまっているといえばいいのだろうか。


 それともただ単に、川中さんに怒られているのが、尾をひいていると考えるべきなのか。


「ありもしない事を不安がるというのは、時に実に滑稽ですね、それ以上笑われるのが所長の望みなば止める事はしませんが」

「それ励ましているの?」

「馬鹿にしていますが、励ましているのと感じるのであれば、所長がどうかしているのでしょう」


 ロボ和歌子初号機にどうかしているのでしょうと言われる迄もなく、どうかしているのだろう。


 お嬢様に呼び出されてから、処分に困るものの名が期待ということに。



 今の気分を例えて言うのならば、背が高いだけで、バスケやバレーを強制的にさせられた、文科系の気持ちにちかいだろうか、どうにも断りづらいのに、相手のその目の輝きに断りづらくいたたまれない気持ちだ。


 そんな気持ちを加速させるように、誇らしげに喜んで微笑みを僕なんかにお嬢様が向けるものだから、何も悪い事などしていないのだが、気恥ずかしさで、のたうちまわり、許されるまで謝り続けたいという、衝動が生まれて、身体から自分でも訳のわからない音が聞こえてきそうだ。



「いやはや立川さんは名探偵と下級生達が噂していましたよ、実にお見事です」

「それよりも、お前の何がどうなって名探偵なんだよ」


 ごもっともな意見である、緑川さんの罵倒というよりも、直球的正論が身にしみる程にありがたいと思えるほどに、お嬢様の悪意のない褒め言葉に精神が追いつかない僕の精神状態を戻してくれている。


 何がどうなってというのは、こちらが聞きたい事ではあるのだが、あの変質者が勝手に、僕を名探偵と誤解し、勝手に改心した事がどうやったらお嬢様の家には名探偵がいると言われるのか、さっぱりわからない。


 こんなわからない事が多すぎる僕が名乗ってもいない名探偵というのも全く持っておかしな話だ。


「それで立川さんはどんな事件を解決したのでしょうか、あのキメ台詞を言えたのでしょうか」

「事件なんておきてませんし、キメ台詞は言えませんでした」

「そうですか、普通なら事件と呼ぶ事も事件と呼ぶことすら出来ない、立川さんの脳細胞がきらめくまでもなく、キメ台詞すら使う場面もないごくごく普通の初歩的な日常の些末な出来事にすぎない、そう仰りたいのですね、あぁでもその場面に立ち会いたかったですね」


 僕の言葉の原型が見つける事が出来ないのではないかと思うぐらい、話が割り増しになってしまっている気がしたので、とりあえず犯人というか唯誰でもわかる変質者に偶然会って、話しかけたら、流石、名探偵と言われ捨てられたエロ本を再度押しつけられたという唯の事故である事を伝える。


「何処が名探偵なんだよ、変質者からお前がエロ本受け取ったって話だろ」


 そのような冷めた目で此方を見てくるが、そもそも僕が名探偵と言い出したわけでもないのだけれど、やはり馬鹿にされて少しばかり安心しる。


 お嬢様とて、僕が名探偵などではないと言うことが分かってもらえただろう。


「いえいえ、それでも立川さんは名探偵としての一歩を踏み出しました、名が知られれば、知られていく程に、事件に遭遇していくことは名探偵の必然とも言えるでしょう、そしてその事件の中にはきっと私の殺人事件があります、その時はよろしくお願いしますね」


 お嬢様は何一つ分かっていなかったとも言えるし、僕がお嬢様の事を分かっていなかったとも言える。


 優雅にいつも通りに微笑むお嬢様。


 そのお嬢様からの厄介な期待が含まれた言葉にいつも通りに分からずに身体から変な音が聞こえてくるのを自覚するだけだった。

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