友達と一言
探偵と言う職業はやる事がない。
自分と同じように、暇に見える門番の茂田さんだって、暇に見えるだけであって、仕事はしている。
メイドの川中さんは、この屋敷の中で目に見えるぐらい、疑いようもなく、働いている。
お嬢様とそのご友人は、学業があるはずなので、もちろん学生という事を全うしているはずなので、平日の昼に一緒に昼食をとっていると、えっ何をしているの、暇なの、サボっているのかとたずねたくなるが、それを今の現状で、僕がいうのは自爆以外の何者でもなく、問える立場ですらない。
「何みてんのよ」
「いえ、学校は記念日なのかなぁって」
「私たちの学校は決められた最低限の日数と学力があれば、進級や卒業について内申は減るということはないのです、その方々のお家の交友や事情を優先するためですね」
先日、あの決め台詞を決めた日の協力関係はどこへやら、むしろ僕への被害すらも妄想であったといわんばかりに冷たいというか、敵意に満ち溢れた態度である。
まぁ親しくはあまりしたく無い男から、チラチラと見られていれば、その態度も納得のいくものではある。
誤魔化すように言った僕の言葉に対して、言葉を律儀に丁寧に返してくれたお嬢様とは大違いだなぁなどと、米粒ほどもおもってはいけないのである。
というか流石はお嬢様の通う学校である、色々と世界で生きているようだ。
「前から理解に苦しんでいたんですけど、なんでお嬢様と不良が交流あるんですかね所長」
それを昼食の時に発言しなかったのは、僕を思いやってのことではなく、ただ単に充電を僕に割り振られた部屋で行っていたに過ぎない。
もしこの言葉が、昼食時にでていたのであれば、僕の精神はかなり削られていたかも知れない。
何か変わったことでもありましたかと聞かれたので、平日にお嬢様たちがこの屋敷にいた理由がわかったぐらいのものと言うことで、昼食の出来事を喋った。
まぁそれが爆弾として投下されずにいてほっとしている。
「まぁ付き合いがあっても不思議じゃないと思うけど」
「どうしてですか?」
「どうしてといわれても、なんとなくだよ」
「私のデータベースが確かなら、お金持ちというのは世間体にこだわるものでしょう」
「あぁそういうものかなぁ」
「繋がりは欲しいけど、怒りを買って家をつぶされたらと思うと迂闊にお嬢様の周りに置けないはずです」
「そこまでのものか」
「粗暴なら普通のお嬢様なら敬遠しませんか?」
粗暴というのが適切かどうかはこの際置いておいて、まぁかのお嬢様だって普通じゃない部分があるのだから、普通では計り切れないものが二人の間にはあるのだろう。
世間体というものを吹き飛ばせるほど。
「まぁあの二人が仲が良い分には問題ないんじゃない」
「所長、これは事件に関することだと、私の内部センサーが反応しています」
嘘つけよ。
「何かあのお嬢様の弱みでも分かればその弱みに付け込めますし、不良のほうだと、ソレが動機になるのかもしれません、そして何より調査もせずにゴロゴロと食べるご飯はおいしいですか?」
「わかったよ、調べるよ」
力説にまけ、調査をしようと思うが、流石に本人達に聞くことになれば、前回の爆弾発言の時と同様、僕の心体に傷がつくだけだろう。
直接聞くという方法をできるだけさけ、心と体に傷をつけずに教えてくれそうで、なおかつ暇している可能性が高い門番の茂田さんのところへ向かおうとした。
「そこの不良さん、お嬢様となんで仲いいんですかぁ?」
「あぁ?」
タイミング悪く、お嬢様ではなく緑川さんに遭遇してしまい、ロボ和歌子初号機はコレ幸いと声をかけた。
その視線とうなり声だけで、僕のコレからが想像できてしまった。
「そんなこと聞いてどうするんだよ」
「調査の一環です」
案の定、緑川さんが落ち着くまで、殴られ、蹴られた。
しかし、まるでそんな事なかったかのように、ため息をつきながら、そんな事聞いてどうするんだということを聞かれたが、そんな事で暴行を受けたのは僕なのだが、それよりもロボ和歌子初号機にこれ以上爆弾を投下されないように、あくまでも調査の一環で聞きたいということをつげた。
「幼稚園の頃からだよ、和歌子とのつきあいは」
「幼稚園の頃ですか」
「あぁ目つきがちょっと悪いぐらいの可愛くおとなしい私に向かって、友達になってくれといわれたんだ」
「それが今や不良ですか、幼少時代の可愛らしい自分に謝ったらどうです?」
なんでそこで余計な茶々をいれるのか分らないが、殴られることを恐れた僕は一瞬身構えるが、緑川さんからの暴力はこなかった。
「ちげーよ、正しくは和歌子から私不良の友達が欲しかったの、あなた不良の友達になってくれるわよねと言われたんだ」
「それはお金持ちの社会でよくある事なんですか?」
お金持ちでない僕が知る由も無いが、知らない僕が答えられるはずもないが普通ではなかった。
「親にいえば、折神の家に逆らうわけにもいかないといわれて、いまじゃあ不良だよ」
「はぁ」
「まぁ友達になった事自体は後悔していないけどな」




