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探偵と遊戯

 人が人を殺したいと思う時は、どんなときだろうか。


 許せないことがあったときだろうか。

 何かから守るためだろうか。

 自分のためになるからだろうか。

 

 憎悪、絶望、愛情、利益、欲望、結局のところ人間の理性や感情がかかわってくる、結局それが理解できるのは犯人か探偵だけだろう。


 人が人に殺されると思う時は、どんなときだろうか。

 それは、殺される直前までわからない。

 何で自分が殺されるのかは分らないし、自分が殺されるということを想定なんてしないからだ。


 想定する、想像するなんて普通はしない。

 危機管理が薄いといわれようが、普通の人間いや現代日本において想像するのは、実際変わっているといっても差支えが無いだろう。


 そういう意味でお嬢様は変わっているといってもさしつかえないだろう、自分を殺した犯人をみつけるためという名目があるとはいえ、自分の殺し方を想像し、犯人をみつけるための捜査を自ら手伝ってくれるという奇異でいて、そして自分の死因を嬉々として、想像するように見えるその行為というのは、理解というのができない。

 諦めているというより、覚悟しているというより、お嬢様は望んでいる。

 

 現実では、いや少なくとも動機の面では容疑者たる3人にありえないと否定された、お嬢様の殺人事件というのを望んでいる。


 ロマンを与えてくれるような、殺人事件。

 本来ならば忌避すべき殺人事件を望んでいるのだ。

 いや、殺人事件の探偵による解決というものを望んでいる。

   

 そして、その解決のためにお嬢様自身の殺され方を今から考えてみるという、本末転倒もしくは矛盾をはらんだ場所に僕は立っている。

 それが不謹慎な遊び場のように思える僕は大人である。

 

 墓場で遊んではいけないという事もしっているし、良識と道義が求められる、成人式でふざけて暴動行為を起こすようなことをしてはいけないと知っている。


 知っていて、なおもその不謹慎な遊び場のような場所で、遊ぶということをしようとしているのだから、後でいや、現在進行形でこちらを睨んでくるメイドさんやお嬢様の友人の口から、のろいのような歌が聞こえてくるのも時間の問題なのかもしれない。


「それで貴女が殺されるのは何でしょうね」

「そうねぇ、まずは毒殺から疑いましょうか」


 本物と似せるように作られたロボ和歌子初号機のこの空気の読めなさ、いやむしろ探偵助手と言う職種を全うしようとするプログラムに身を任せ、ちぢ込ませながらこの会議のような遊び場が閉鎖されるのをまつしかない。

 

「毒殺なら、それを入手できる人物をたどれば犯人でしょう」

「たどらずとも一番真っ先に疑われるのは私でしょうね、不本意ながらですが」

「そうねぇ よしみなら、そのチャンスという機会が幾重にもあるのだから」

「まぁその前にお嬢様を殺そうと思うということがまずありえません」

「真っ先に疑われるようなことをしない、犯人の鉄則のようなものですよね、所長」


 そこでうんと言ったら、僕はどうなるのだろうか。

 考えるまでもないような明確な未来が見えるきがした。


「そう見せかけて、よしみが犯人かもしれないわね、立川さんはどう思います?」

「どう思うも何も無いですよ」

 

 あいまいに返事をしながら、このまま、なにも言わずにこの遊び場から部屋へともどり、布団をかぶって眠ってしまいたいと思う。


「所長、たまには探偵らしいところ見せてやって下さい」

「そうですねぇ立川さん、よしみが犯人と仮定して私はどのように殺されるか推理をしてください」 

「予行練習と思って頑張ってください所長」


 なんていう、無茶な要求をしてくるのだろう。


 しかし、依頼人からの要求ましてやほとんど仕事らしい仕事をしていない、僕が断るという選択肢を持つことができず、恐る恐る、川中さんの顔をうかがいながら、それらしい推測を立てる。


 毒殺であるのなら一番自然に殺せるのが、メイドの川中さんだと思うことは間違いない、機会も多いだろうし、確実性があるとでも言えばいいのだろうか、いやそれはありきたりで、現実味しかない。


 いや、そもそも現実味もないような気がしてくる。

 毒殺という事は、何かに仕込まないといけない、その場合もっとも適当なものは、食事や飲み物に仕込むことだろう、だけど、結局それはメイドが川中さんしかいないような状況で、毒を盛るのであればそれは、自分がやったと白状するようなものだ。

 ならば、この間のようにお嬢様と友人の緑川さんとお茶をするときだろうか、いやこれでも結局用意するであろう、川中さん以外に疑惑が向かない。

 

「川中さんが、毒殺するのであれば、何かしらのパーティだと思います、そうすれば料理を準備する他のメイドさんにだって疑惑の目が向くし、誰かに罪をなすりつけることも可能でしょう、何ってたって専属のメイドの川中さんが、パーティのような大勢の目があるとき以外にも殺せる機会はあるのに、わざわざそんな機会に殺そうとは考えないでしょう」

「なるほど、パーティなら大勢の人がきますから、よしみ以外にも犯人と疑われる人がいるでしょうね」 


 こじつけのような、思いつきのような推測ではあるが、とりあえず少しは現実味があるような推測を立て、お嬢様は一応納得はしてもらえたようで、ほっとすると同時に思いっきり足を踏まれた。


 

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