15
目の前にいる幼馴染はーーーー
両目を切られ開くことができず、両腕を切断された幼馴染だった。
ーーどうして、こうなった。
ついさっきまで、普通の学園生活だったじゃなかったのか。
ーー俺逹は何をした。
ごく普通の日常を過ごしていただけじゃなかったのか。
自分が自分では無くなりそうになって、
頭が空っぽになって、
何もかもがどうしようもなくなって、
訳が分からなくなって、
気がつくとーー俺は病院の患者服のような色合い服を着せられ、どこかの研究所のような場所いた。
そして、鋼鉄のベッドに両手に両足などを固定され、身動きが取れないでいる。
ーーどうして、こうなった?
いまいち状況を整理できないでいる俺に、左側から声を掛けてくる声が聞こえーーーー
「やぁ。君が那由多浩一くん、かい? 私は君に、とても会いたかったんだよ!!」
長い白髪に、ひょうひょうとした身体つきが白衣によく似合うというのが褒め言葉なのだろうが、どこからどう見てもマッドサイエンティストにしか見えない。
「えぇ、そうですが。あなたは誰なんですか?」
「私は、自分の名を口にしてしまうと死んでしまう病気なんだ。すまない……」
有り金を全て博打に投資し、一瞬で溶かしたような素振りを、俺に見せつけてきた。
だが、男の抵抗も虚しくーーーー
「この人の名前は瑛人です。ダサい苗字だから言いたくないだけの変態科学者ですから、いないと思った方がいいです」
「アリスくん、ダサい苗字は失礼じゃーないか。
私は幼い女の子に対してしか興奮できないだけで、TPOは基本的に弁えている!!」
「どこを弁えているんですか。死んでください」
「私は幼女にしか蔑まされたくないんだよ、アリス君。君はいかんせん胸の」
目の前にいる金髪美少女が科学者を殺しにかかっている状態を他人事のように見ながら、今の自分で判断できることを必死に考えたが、
この状況下で解ることはーー俺は拘束され、記憶の一部を無くしているということだけだった。
笑顔が眩しく、側にあった大切なものが淡く消えたような感覚。
それでも自然と悲しくなくーーむしろ、思い出してしまったら、何もかもが崩れて崩壊するような気がしてならない。
何から何まで分からないことだらけだけどーー今は、この拘束を解いて自由になりたかったのだがーーーー
「そうだ! 私としたことが忘れていたよ。
君を殺処分するか、私達の仲間になるかーーここで決めないといけなかったんだ」
瑛人は恐怖から逃れるためなのかーー訳のわからない単語を口にすると、テーブルに置いてある黒みがかった赤い液体を持ってきて、目の前に差し出すと、
それを傾けーーーー
「君は、どんな反応を示すのかな?」
瑛人は口角を上げ、赤い液体を俺の口元に流し込もうとしてきた。




