第二章 高峰家で勉強会1
◇高峰 想次◇
俺が宿題に追われてなんとかして眠りについた翌日
いや、正確には眠りについた日の朝だが
ゆさゆさ… ゆさゆさ…
(???)
「朝だよお兄ちゃん起きて、早く起きないと遅刻するよ」
淡々とした声で俺の安眠を乱してるのは声からして女らしい
(???)
「朝だよお兄ちゃん起きて、早く起きないと遅刻するよ」
(想次)
「きのーねるの…、おそふぅ…」
何しろ山盛りのトラブルに一段落ついてどうにかして宿題を片付けた時には二時過ぎてたからな
(???)
「あまりにも起きるのが遅い時は実力行使していいと言われている」
(想次)
「くうぅ…、くうぅ…、」
実力行使だろうがなんだろうがひたすら眠い
(???)
「実力行使するぞ」
やれるものならやってみろ
突然腹部に異常な痛みが走った
(想次)
「ふぶぅあああああああ~~~~~~~~」
この痛みは表現不可能だ
眠気なんて一瞬で吹き飛びベットの上でのたうち回る
(???)
「一過性の痛みが走る急所にヒジを入れた、その痛みはすぐ消えるはずだ」
(???)
「お母さんからの伝言だ、朝食が出来てるから早く着替えて下りてくるようにとのことだ」
そう言って俺に激痛をプレゼントしてくれやがったやつはさっさと下りていったって女?、お母さん?
眠気は消えているものの寝ぼけたてはっきりとしない頭で昨日の記憶を掘り起こす
つさいのたうち回る目覚めをくれやがったのは忍のやつか
つーかお兄ちゃんつさいのは何なんだ
また母さんの悪ふざけか
俺は痛みが引いてから一階の台所へ行く
(想次)
「おはよー、それと忍、あの起こし方は勘弁してくれ、もうちょっとましなやり方はないのか?」
(忍)
「そうか?」
そう言って振り向いたのは金髪セミロングの可愛い女の子だった
(想次)
「え…、忍だよな?」
(忍)
「そうだ」
(想次)
「その髪は?」
(母さん)
「おはよう想次、その金髪ウィッグよ」
(忍)
「やばい組織に入っていたなら変装くらいした方がいいと言ってこれをつけられた」
(母さん)
「どお、とっても可愛いでしょう」
(想次)
「まあ理屈はわかるし可愛いのも確かだけどそれよりお兄ちゃんってのは何なんだ、それも母さんの仕込みだろ」
(母さん)
「だって忍ちゃんって誕生日もないんだもん、それに見た所想次よりも少し年下っぽいからね」
(想次)
「だからってお兄ちゃんはないだろお兄ちゃんは、せめてお兄さんか兄さんにしてくれ」
(忍)
「お兄さんか兄さんならいいのか?」
(想次)
「ああ、せめてそのどっちかにしてくれ」
(忍)
「ならお兄さんで」
(想次)
「ああ…、それで頼む」
俺は朝だというのに既にぐったりと疲れた気分で椅子に座った
(母さん)
「そう言えば忍は朝の挨拶はしたの?」
(忍)
「まだしてない」
(母さん)
「ならちゃんとしないとね」
(忍)
「おはようございますお兄さん」
(想次)
「おはよう忍」
(母さん)
「さあ、冷めない内に食べましょう」
今日の朝食はクリームシチューと水出しの麦茶だった
(全員)
「いただきます」
シチューの中身は肉抜きの柔らかい野菜ばかりのヘルシークリームシチューだった
(想次)
「朝からシチューってのも随分と珍しいな」
(母さん)
「しばらくは忍ちゃんに合わせようと思ってね」
なるほど、昨日の玉子粥を除けば組織の丸薬しか食べてないからな
重いものや胃にもたれるものはやめた方がいいだろうしかたいものもやめた方がいいだろう
刺激の強いものや喉に詰まりかねないものなんてもっての外だな
と考えつつ食べてると忍はスプーンで掬って(すく)しばらくじーっと見てたと思うと思い切って口に入れた
クリームシチューがすごく美味しかったのかものすごく驚いた表情をしたと思ったら慌ててまたシチューを掬って口に入れたから今度は涙目になって口を押えてあたふたしている
母さんが慌てて「水、水を飲みなさい」と言って麦茶を飲ませる
(想次)
「熱いものを一気に口に入れるとそうなねのは当然なんだけどな」
とついつい苦笑しながら言ってしまう
(母さん)
「そうね、熱いものを食べる時は火傷しないように少しずつ食べるようにした方がいいわね」
忍が涙目のままこくりと頷く
そのしぐさが随分と可愛く見えるのは兄としてどうなんだろ?
(母さん)
「それと食べたものをもっと欲しくなるのは美味しいということだからその時はちゃんと美味しいと言ってくれるとお母さんとしてはとっても嬉しいわよ」
その言葉にもこくりと頷く
そして忍が美味しい美味しいと言いながらシチューを食べて母さんにマナーについて注意されて美味しいと言うタイミングを教えてもらったりしつつご馳走様をした
(忍)
「これはまた食べれるのか?」
(母さん)
「毎日とはいかないけど時々作ってあげるわよ」
どうやら朝食をきっかけにして忍にも人並みの食欲が生まれたようである
(想次)
「そういや俺より年下っぽいとか言ってたけど誕生日とか歳とかはどうなったんだ?」
(忍)
「誕生日はお兄さんがわたしを見つけた日、昨日が誕生日ということになった」
(想次)
「そっか、ある意味そこから第二の人生が始まったと言えるから悪くないな」
(忍)
「歳の方はお母さんが18才ということにしておけと言ったので18才ということになった」
(想次)
「はあ…、俺も誕生日過ぎてるから俺と同い年じゃねえか」
母さんのやつ絶対狙ってるだろ
忍は俺より一回りは小さくて中学生と言っても通じそうなのにな
嫌な予感しかしねえ
母さんに一言言いたい気分だったがお喋りしてる時間がなくなってきた
(想次)
「忍、家から出るんじゃねえぞ、それとパソコンの使い方を教えてもらって辞書とかウィキとかで勉強しとけよ」
(忍)
「わかった」
(母さん)
「大丈夫よ私も色々と教えてあげるから」
(想次)
「それが一番不安だっつーの」
と言いながらカバンをひっつかんで高校へ向かった
随分と遅れてしまったー
誤字・脱字の類があれば遠慮なく指摘してください(恥をかいてることを知らない無知より指摘される一時の恥を選びます)