第六.五章 三者は三様
◇ ◇ ◇
午前の授業が終わった昼休み
想次達は学食で昼食を食べていた
(樹)
「それにしても最近妙なニュースを聞くようになったな」
(想次)
「今朝の倉庫街のやつとか?」
(今日子)
「えー、それなんなの?」
(想次)
「詳しいことは今は聞かない方がいいぞ、食欲がなくなること請け合いだからな」
(樹)
「そうだな」
(忍)
「今日はみんなで鷹目ラーメン食べにいかない?」
(樹)
「おっ、忍ちゃんがそういうこと言い出すなんて珍しいね」
(楓)
「樹、あんたは余計なこと言わなくていい」
(楓)
「勿論いいわよ」
放課後みんなで鷹目ラーメンを食べに行くことになった
丁度昼食と夕食の隙間時間だったためかお客さんはそれほど多くない
(義明)
「いらっしゃい、おうあんた達かい、好きなとこに座っててくれ」
(忍)
「注文してくる」
(想次)
「こうも積極的に動くなんてなんか変だな、何かあったのかな」
(忍)
「マスター、鷹目ラーメン六つ、それと」
忍は義明にだけ聞こえるように声を潜めて言う
(忍)
「倉庫街のニュース見た?」
(義明)
「ああ、だから店の人員を最低限にして他は自警団に全員行かせて見回りを強化している」
(義明)
「ブラッティクローはまだ見つかってねえんだ、やつが血に狂って殺し回ってる可能性は十分にある、お前も気をつけろ」
(忍)
「わかった」
その後鷹目ラーメンを美味しくいただいてから忍は最近のニュースは物騒だと言って想次と一緒に家まで送ることにした
◇ ◇ ◇
12月15日深夜 桜ヶ丘町繁華街の路地裏
そこには一目で見て暴力団関係者とわかる死体が転がっていた
その中でまだ無傷の男性が拳銃を構えてだらだらと冷や汗を流しながらぎょろぎょろと回りを見ている
「暴力団の男」
「ちくしょう、俺を丹羽組の幹部と知ってやりやがったのか」
(???)
「そんなことは関係ねえな、そんなことよりてめえの強さはその程度かよ」
暗闇から何かが飛び出し暴力団の男の左腕を切り裂く
男は碌に狙いもつけずに拳銃を撃ったが空しく暗闇に吸い込まれるだけだった
暴力団の男の左腕には三列の切り傷がついていた
(???)
「てめえの抵抗はそんなもんかよ」
(暴力団の男)
「くそ、くそ、くそくそくそ!」
男は辺り構わずに発砲するが襲ってきた男にはかすりもしなかった
(???)
「つまらねえな、せめててめえの血で楽しませろや」
男の側を何かが横切る度に切り刻まれた男はそのうち血塗れになって倒れた
襲撃者は倒れた男の頸動脈を切り刻んで血飛沫を浴びると月を見ながら呟いた
(???)
「つまらねえな、血飛沫浴びるだけじゃつまらねえな、もっと俺を楽しませるもんはねえんかよ」
そのぼさぼさの髪は真っ赤に染まり、両手に持つ鋼の爪は血に濡れていた
ブラッティクローは戻れぬ道を刺激を求めて彷徨い、殺し続けていた
◇ ◇ ◇
12月16日
みんなで学園に向かう途中で遥さん達に出会った
(樹)
「おはようございまーす、遥さん」
(遥)
「はいおはよう」
(忍)
「おはよう折枝」
(折枝)
「おはよう高峰」
(楓)
「こんな朝早くから巡回なんて大変ですね」
(遥)
「そうね、でも最近は気が抜けないからね」
(想次)
「倉庫街に繁華街と続いたあれですか」
(遥)
「暴力団の幹部までやられたなんてしゃれにならないからね」
(今日子)
「暴力団がやられたーってのはそんなに厳しいことなの?」
(遥)
「そうよ、だって犯人は銃を恐れないって証拠になってるもの」
(今日子)
「うわ、それは大変だ」
(遥)
「私達に協力してくれる所がなかったら正直絶望的だったわ」
(折枝)
「いえ、身内の不始末のようなものですから」
(遥)
「それでもよ、ありがとうね」
(忍)
「わたしも見かけたら何とかしよう」
(遥)
「忍ちゃんは無理に関わらなくてもいいのよ」
(折枝)
「そうです、高峰は一番人間らしくなっているのですから」
(忍)
「でもわたしも元Bクラスだから」
(想次)
(普通の人間としての人間らしくって意味だろうな)
(樹)
「いったい何の話しなんだ」
(想次)
「俺達には関係のない話しさ()下手なことを言って首を突っ込まれるわけにはいかないしな」
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