第四章 忍と鷹目ラーメン
◇ ◇ ◇
一時限目の現国が潰れてその後数学に社会と続いたが新しい情報を覚えることの楽しさを知った忍は、母さんのノートパソコンを借りて通信教育だのなんだのと色々とやっていたのでわからな過ぎてどうしようもないという最悪の事態にはならずに済んでいるようだ
そして四時限目の体育は新学期の最初の二回を使って身体測定を行うことになっている
この場合の体力はHPみたいなゲーム的な意味じゃなくて運動能力全般を測る文字通りの体の力という意味である
この時ばかりは忍に回りに合わせておけと言っておくべきだったと後悔している
走り幅跳び 6m25
走り高跳び 1m80
50m走 5秒82
などとかなりの身体能力を示す記録を連発して目立っていた
更にはこれでもほどほどに手加減してるつもりだったとか…
考えてみれば暗殺組織で育ってるから身体能力が抜群て゜も不思議はなかったんだよな
それと言うまでもないことだがクラスの中に体操服に久瀬 樹と書かれたミイラ男がいたりするが気にしたら負けだ
そして昼休みだが女子が着替えるのを待ってる間に学食に満員になってしまった
当然購買も碌なものが残ってない
先生ー、男女の更衣スペースはきっちり確保しといてくれよ
そこで学食を買って中庭で食べることにした
(忍)
「これが券売機というものか」
(想次)
「そうだ、ここにお金を入れてここに書いているメニューから食べたい物を選んでボタンを押せば食券が出てくるからそれをカウンターに持っていけばいいんだ」
(忍)
「お金はお母さんからのお小遣いがあるから…、Aランチというものにするか」
(想次)
「じゃあ俺はBランチにしとくか」
食券を買ってカウンターのおばちゃんに渡す
(おばちゃん)
「あいよA定B定お待ち」
(想次)
「席があれなもんで中庭で食べてくるよ」
(おばちゃん)
「ちゃんと食器を返してくれたら文句は言わないよ」
既にランチを受け取って待っていた樹と遊馬と合流する
(想次)
「おまたせ」
(遊馬)
「慣れてない人もいるから仕方ないですよ」
(忍)
「すまない」
(樹)
「忍ちゃんが悪いわけじゃないよ、ちゃんと場所を確保出来なかった先生が悪い」
(想次)
「さっさと食べようぜ」
(樹)
「そうだな」
安くてそこそこボリュームのある定食セットを美味しくいただいて昼休みは終わった
9月の22日と23日は中間テストだ
二学期早々に中間だなんてやけに早いと思うかもしれないが、これにはいくつか理由がある
一番大きな理由は10月に学園祭があるからだ
学園祭は学校わ舞台にしたお祭りのようなものだから準備にはそれなりに時間がかかる
だから中間テストは速く済ませるという学校側の気遣いというものだ
そして二つ目の理由はこの二日間が休日に挟まれているのでどの立場からも都合がいいということだ
忍は転入したばかりで不利だと思ってるやつもいるかもしれないが、授業の様子を見るかぎり問題はなさそうだ
ただ、現国のこの文章を読んで感想を書きなさいなどといった感性を問われる問題はお手上げのようだ
想次と遊馬も赤点の危機がないという意味では忍と同じで樹と楓はいつもクラスの上位に食い込んでる
だが気の毒なのは今日子で得意の音楽以外はかなり低空飛行な点しかとれずいつも赤点の一つや二つはとってしまっている
テストが終わってみんな開放感に満ち溢れてる中今日子だけがどんよりと沈んでいた
(今日子)
「ああ…、今回も赤二つは確定だよ…」
(楓)
「まあまあ、補修は免れないと思うけどそんなに落ち込んでないで気持ちを切り替えていこう」
(樹)
「美味いもんでも食えばちょっとは元気でるんじゃないか」
(遊馬)
「確か最近オープンした美味しいラーメン屋さんあるって噂になってましたね」
(想次)
「じゃあいっちょう行ってみるか、忍もくるだろう」
(忍)
「うんいく」
(今日子)
「私はいいや…、そんな気分になれないから」
(楓)
「そんなこと言わないでいこいこ、今日子の分は私がおごるからさ」
(今日子)
「えっ、ちょっと」
俺と楓で今日子の両腕をガッチリとホールドして噂のラーメン屋へ強制連行する
(遊馬)
「ここですね」
(想次)
「鷹目ラーメンか」
(忍)
(鷹目…、ホークアイ?)
お店に入るとテーブル三つとカウンター席に椅子を並べてるこじんまりとして店だった
(店の主人)
「へいいらっしゃい」
まだまだ十分若く見える精悍で野性味のある魅力的な男性が威勢のいい声で出迎えてくれた
(忍)
(この人どこかで見たことがあるような気がする)
店のウェイター思しき高校生くらいの少年が人数分のおしぼりと冷えた水を運んでくる
ウェイターの表情はいわゆる営業用スマイルというやつだが、なんだかそのスマイルが張り付いてるような気がする
(忍)
(何だろう、この雰囲気といいこの感じといい、まるで組織にいた頃の私のようだ)
(忍)
(まさかと思うが)
(想次)
「どうかした、忍」
(忍)
「いや、なんでもない」
(想次)
「それじゃ、何を頼もうか」
(遊馬)
「美味しいと噂になってるのはこの鷹目ラーメンですよ」
(想次)
「そうか、ならご主人、鷹目ラーメン六丁」
(店の主人)
「あいよ、でも出来ればご主人じゃなくてマスターと呼んで欲しいもんだね」
(店の主人)
(想次のやつ気がつく気配もねえな、まぁいつも単身赴任ということにして家にいないんだからしょうがねえか)
(店の主人)
(それに一緒にいる金髪の嬢ちゃんはなんか俺達に近い匂いがするしな)
(店の主人)
(ありゃ、変装してるが組織の関係者だろうな)
(店の主人)
(今夜久しぶりに奏にメールを出すか)
(店の主人)
「鷹目ラーメンお待ち」
(遊馬)
「きたきた、いただきまーす」
(樹)
「美味いな、これ鶏ガラとコンソメのスープか」
(想次)
「それだけじゃないな、一つや二つじゃきかないほど工夫をこらしてるんじゃないのか」
(忍)
「美味しい…」
(楓)
「ほんとにねえ、これなら噂になるのもわかるわ」
(今日子)
「(ふーふー、ちゅるる)ん~美味い、ほんとに美味いよこのラーメン」
(樹)
「おいおい、猫舌なのにそんなに慌てて食べて大丈夫か」
(今日子)
「だって美味いんだもん」
(想次)
「まあわかるけどな」
みんなスープも残さずに食べきった
店に来る前に決めた通りにみんなでお金を出し合う(今日子は楓のおごり)
(レジ係の女の子)
「お会計は4500円になります」
レジ係の女の子もやはり張りついた笑顔だった
店を出てから
(想次)
「なんか雰囲気がちょっとおかしな漢字だったけど噂通り美味しい店だったな」
(樹)
「そうか、あの店どっかおかしなとこあったか?」
全然気づいてないやつかいるし
(今日子)
「うそ、あのピリピリした感じに気づかなかったの」
(遊馬)
「ある意味大物といいますか」
(楓)
「鈍感なだけよ」
(楓)
「けどラーメンが美味しかったのは確かね」
(忍)
「うん」
(楓)
「今度また何かあった時にみんなで食べに行こう」
(想次)
「そうだな、一人で食べに行くにはあの雰囲気はちょっと…だしな」
(遊馬)
「そうですね」
誤字・脱字の類があれば遠慮なく指摘してください(恥をかいてることを知らない無知より指摘される一時の恥を選びます)




