産まれた使い魔
まだ眠ろうとしようとする眠気を揺さぶる朝の微睡みの中、僕はゆさゆさと誰かに起こされるように僕は身体を揺さぶられる。
「…………ですよ」
ゆさゆさと揺さぶられるが、僕はまだまだ眠たいので布団を被ってその起こそうとする攻撃に抵抗の意思を示す。
「…………朝ですよ、起きてください」
心にすっと入って来るような透き通った優しい声。起こそうとしているのに、その声を聞いていると安堵と共に眠気が襲ってくる。そんな綺麗で美しい声が僕の耳に響いてくる。
「…………起きてください!」
しかし、彼女は業を煮やしたのか、布団を奪われた。
守る物を奪われた僕は、強い朝日と朝の涼しげな寒さから僕は眼を覚ます。妹の二世に起こされていた事を思いつつ、僕はまだ寝ぼけていた状態の中から完全に覚醒した。そして目の前に現れた、僕を起こそうとしていた人物を見た。その女性は僕のパーティーメンバーの紅葉ではなく、ここには居ない姫やユリエル姫でも無かった。そして全く知らない人物と言う事でもなかった。
「お、おはようございます、朝比奈さん。いえ、ここはご、ごご、ご主人様とお呼びした方が宜しいのでしょうか?」
吸い込まれそうな紫色の瞳に、その瞳の下にはそれをさらに大人っぽくする泣き黒子が付けられている。肩の辺りまで伸びる質量たっぷりな赤い髪は燃え盛る炎のようにメラメラと逆立っていて、『ボン、キュッ、ボン』の分かりやすい擬音では言い表せないような『ボボン、キュッキュッ、ボボン』と言う他の美人のナイスバディの女性よりも遥かにも豊満な身体つきを持っている。その背中から生える2つの燃える大きな翼は燃え盛りながらも全く熱さは感じず、むしろ太陽のような温かさを感じる心温かな炎だった。
着ているのもまた、浴衣ながらもその豊満な身体つきを隠しきれないような、今の彼女にぴったりの炎の模様が描かれた浴衣。
そんな彼女は僕達を見て、優しく声をかける。
「ひ、久しぶりですね。こ、この前会ったのは、精霊でしたけど」
「月裏さん……?」
なんだか緊張しながら言っている女性のは、姿は変われども見知った神様。月裏ラキナエルさんでした。
【朝比奈揺 Lv.22 種族;人間 職業;神殺しの二剣流 HP;580/580 MP;420/420 加護;ルルリエルの加護
紅葉 Lv.21 種族;リッチ 職業;希望の魔法使い HP;126/126 MP;7000/7000
月裏 Lv.1 種族;不死鳥 職業;拳士 Hp;50/50 MP;200/200】
ステータスを開くと、そこには確かに月裏さんの名前があり、きちんと情報が載っていた。
「まさか月裏さんが卵から産まれて来るとは……しかも不死鳥だなんて……」
「う、うん。で、でもレベルは1だけどね」
話を聞くと、あの卵の中には月裏さん……の分霊が入っており、その月裏さんの分霊と不死鳥の性質が融合して、昨日の『炎』の魔力ポットから大量の魔力を得て1晩で生まれて来たのだそうだ。
「け、けどね。2人に迷惑をかけないよう、私、すぐに強くなるから。そのために戦う相手はもう分かってるの」
ふん、と力強く言う月裏さん。その意思はやる気に満ち溢れており、心なしか翼の炎もなんだか先程よりも大きく燃え盛っている。
「相手が居るんですか? レベル1でも倒せるようなモンスターは、この辺りに居ましたっけ? 朝比奈さん?」
「……いや、レベルとは覚えてないけど、少なくとも居なかった。ここはやっぱり3人で一緒にやった方が良いでしょう」
「う、うん。そ、そうですね。朝比奈さん、それに紅葉さん。私をあの卵の中から出してくれたのにも関わらず、強くなるレベル上げに付き合わせて申し訳ありません。このご恩は、いつか返させていただきます」
ぺこり、と綺麗に頭を下げる月裏さん。その所作には一切の無駄が無く、堂々として綺麗だった。その動きに惚けていた僕と紅葉を見て、
「えっ、えっ? こ、これじゃあだめですか? じゃあ、今はお金も、力もありませんから、ここはか、かか、身体で払うしかないんでしょうか?」
と眼を回しながら可笑しな事を言う月裏さん。そう言いながら服を脱いでその豊満で美しい乳房を晒すのを何とか僕達は慌てて防いだのであった。