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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
死神だけど愛さえあれば関係ないよねっ!
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使い魔の卵

 宿屋についた僕達はさっそく卵の呪いの解呪を開始する。

 ベッドの上には卵、その前には本を読み終えて準備万端の紅葉。そして部屋の隅で僕は事の成り行きをうかがっていた。

 前に僕が呪いで倒れた時は、かなり紅葉が頑張ってくれていたと聞いた。そして呪いをかけられた僕は、解呪とはどう言った物なのか見ていないので、生で見られると言う事でわくわくしていた。

 そして紅葉が解呪を開始する。



「イ・シェン」



 と、紅葉が唱えると使い魔の卵にかかっていた呪いが解け、普通のどこにでもあるごく有り触れた卵が出来上がっていた。



「これで呪いは解呪出来ました、朝比奈様」



 と、たった一言、言葉を唱えた紅葉はそう報告して来るが、僕としては驚きでしかなかった。

 あ、呆気なさすぎるだろ……。たった一言。唱えただけで解呪とは……。



「もしも紅葉が居なかったら、こんなのに金を払ってないといけなかったのかよ」



 これくらいならば僕だって出来る気がする。多分だけれども。



「いえ。朝比奈様。この卵の解呪は簡略化されていたからこそ、ここまで簡単に解けたのです」



「簡略化?」



 呪いが簡略化されていたから、簡単に解けた?



「詳しい説明を頼む」



 分からない僕は、紅葉先生に聞く事にした。分からない事はその場で聞く。これが勉学上達の鉄則だからだ。



「分かりました。説明します。

 呪いと言うのは、『解けない、解かせない』と言う事を前提に作っています。だから呪いと言うのは解けないようになっているんですよ。けれどもこの卵の表面にかけられているのは、そう言う容易く解けるように設定されている呪いですからすぐに解けたんですよ」



 なるほど。呪いは解けにくいのを前提に作っているから、あんな一つの単語で解ける事が出来るようになっていたと言う事ですか。



「……ん?」



 卵の"表面"は?



「卵の表面にかけられている呪いは、さっきの『イ・シェン』なんていう言葉で解呪出来たんですよね?」



「えぇ。この呪いを解いた事によって、すぐにでも孵化(ふか)出来るようになっています。そして私の方で魔力を加えて、中に居る使い魔の成長を促そうと思っていたんですが……。何か、良く分からない術式みたいなのが組み込まれているみたいなんですよ」



 「魔力を入れて見れば分かりますよ」と言う紅葉の言葉に合わせて、僕は魔力を卵に加えてみる。すると脳内にある文章が浮かび上がってくる。



【試練の神の主神・日向(ひなた)ラファエルからの問題。

 この問題を解かない限りは、この卵は孵化(ふか)しませんし、1週間以内に問題を解決出来なかった場合は、この卵の中の生命は消えてなくなってしまいます。

 では、問題です。

 【母親が産まれてくる子供に一番最初に与える物】とはいったい何でしょうか?】



「……これは?」



 なぞなぞの一種だろうか?

 【母親が産まれてくる子供に一番最初に与える物】、か。



「これは呪いの中でも、かなり特殊な物ですね。これは謎解明系です。

 魔力に関係無く、謎が解けない限りは永遠に呪いが解けないタイプの呪いです。この呪いに魔力は関係無く、この謎が解けさえすれば魔力は関係ないです」



「謎、か……」



 さっきの、【母親が産まれてくる子供に一番最初に与える物】と言う質問を答えないといけないのか。



「この質問……僕、前に出された事ある」



「――――――――そうなんですか?」



「あぁ。前に妹に出されたんですよ。地球の時の、二世ふたよと言う妹に出された事があったんだよ」



 あれは確か、母親が弟を出産した時の頃でしょうか。二世がそう言う質問を出した時があったんだよな。



「じゃあ、朝比奈様はこの問題の答えを知っておいでで?」



「あぁ、多分だけれども……」



「だったら話は簡単です。心にその答えを念じながら、ちょっと魔力を込めるだけでこの呪いは解決します」



「そう、なのか。だったら――――――」



 やってみるか。と言う気持ちで、僕はその答えを心の中で念じて見た。



【――――――――】



 すると、またしても脳内に言葉が飛び込んでくる。



【試練の神の主神・日向(ひなた)ラファエルからの返答。

 おめでとうございます。答えとして正しい正答です。よって、この試練、【愛し合う者の試練】は見事にクリアとみなされました。

 【母親が産まれてくる子供に一番最初に与える物】、それは先程あなたの胸に抱いた物と答えは同じです。

 さて、試練クリアの賞品といたしまして私の方から1つ助言を行いたいと思います。

 この中に入っている使い魔は、熱い【炎】の魔力を好む性質があり、今からそこに転移させる魔力ポットには大量の【炎】の魔力が入っています】



 何の事だ、と思っていると机の上が白く光り輝いたかと思うと、そこには見覚えのない瓶が置かれていた。その瓶の中では濃い赤色のもやみたいな物が渦を巻いている。



「魔力ポット……。魔力を瓶の中に込めた物ですね。中には大量の【炎】の魔力……。どうやってこんなのが……」



 紅葉の呟きからしても、これは魔力ポットで間違いないらしい。そうか、これが魔力ポット……。



 言葉はさらに続く。



【あなたにはユラギーン・ナイトを倒した時に手に入れたスキル、『操り人形(マリオネット)』があります。そのスキルは片方に糸を結んだ物へと当人が魔力を渡すと言うスキルですが、その自分側の糸を魔力ポットに付ける事によって魔力ポットの【炎】の魔力を、卵に注ぎ込む事が出来ます】



「ま、マジか……。やってみよう」



 僕はそう言って、卵目がけて、スキル『操り人形』を発動する。すると僕の手から白い糸のような物が出て来て、その糸の先は卵に付いた。僕は自分の手に付いた糸をそっと取り外し、魔力ポットに付ける。

 すると、魔力ポットの赤い【炎】の魔力が、糸を伝って卵に送り込まれていくではないか。



「す、スゲー」



「魔力伝達率が良いからこそ起きる現象……いや、そう言うように作られたスキル? あるいは呪術的な何かが?」



 紅葉はぶつぶつと何か考察しているが、僕はどうだって良かった。大切なのは、魔力がちゃんと伝達されている事だったからだ。



【これで明日の朝には、その卵から使い魔は産まれるでしょう。その時を心待ちにしてお休みを】



 そして言葉は消えた。



「と、とにかく……。言葉通りだと、明日の朝にはなんか産まれてるっぽいから私達は寝ようか?」



「そう、ですね」



 そう言って、僕達は宿屋のベッドに横になって眠りについた。

 答えは後ほど発表します。

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