表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/266

愛し合う者の試練

 さて、どうするか……。



 色は関係ないので、まずは大きさを確認しよう。



(とりあえず、あまりに小さいのや大きいのは止めて置こう)



 この手の中にすっぽりと収まるような卵には良いのは入っていないような気がする。あと、大きすぎても中から出て来るモンスターを養えるほど僕は経済的にお金がなくて、養えないと思うから却下しておこう。



(あと、(まゆ)みたいなのも止めて置こう。これは多分、虫系統の魔物が入っているに違いない)



 明らかに黒く塗られただけの、糸で作られたようなこの卵は明らかに虫の(まゆ)なので気にしないで置く事にしよう。他にも形が少し可笑しいのは文字通り却下して置いた。翼が生えていたり、(うろこ)が見えるのは少し奇妙な気がして来る。



「――――――となると、大きさも普通くらいの卵を見て探しておこう」



「そうですね。魔法も使えないとなると、それしか方法がありませんか。初めからある程度決めて、見つけていた方が良いですね」



 まぁ、魔法さえ使えればアースソナーを使って1発なんだけど、出来ない以上見て回るしか仕方ない。



 しかし、大きさを中くらい、そして特にこれと言った特徴のない卵となるとごろごろとある物だ。20、いや30はあるだろう。この小さな店の一室で20も30もあるのは、結構多いと思う。



「さて、どれが良いか」



【…………で】



「んっ……?」



「どうかしましたか、朝比奈様?」



「いや、何かな……」



 何か女性の声が聞こえた気がするのだけれども。可笑しいな、この店に居るのは僕と紅葉、そしてムッキムキの店主のおじさんしか居ない。このうち、女性なのは紅葉だけであり、その紅葉も違うと言っている以上、どこから聞こえて来たと言うのだろうか?



【…………んで】



 まただ。でも、この中にその声を発する奴が居ない以上、どこに居ると……。



(……まさかこの卵、からか?)



 ……いや、まさかな。



【私を選んで】



 今度ははっきりと聞こえて来た。確かにこの声は女性の声だ。それにどこかくぐもって聞こえている。つまりは何かに遮られながら聞こえていると言う事だ。この店は狭いから隠れるような場所と言うのはそんなに少ないけれども、ロッカーとか箱の中から聞こえて来ると言うよりかは……どこか壁を隔てて聞こえて来る。



(もし、本当に卵だとすればどの卵からだろうか?)



【こっち! こっちです!】



 まただ、また聞こえて来る。僕はその謎の声のする方向に眼を向ける。



 ――――――そこには普通くらいの、他とどこが違うと言うのかが説明できない卵が、その部屋の目立たないような片隅にあった。



「僕はそれにします」




 そして、僕は――――――




 その奇妙な声に連れられるようにして、その卵を選んだ。



「本当にそれで良いのかい? 後悔はないね?」



「もっと時間をかけても良いのでは?」



 店主と紅葉が再考の余地がある事を告げる。

 僕だってそれは正しい選択だと思う。



 『卵から女性の声が聞こえて来て、その女性の声が聞こえて来た卵を選んだ』。



 もしその事を店主に話したら、何を言っているんだと笑われてそれでしまいだろう。紅葉だって笑いはしない物の、良い顔はしないだろう。



 けれども何故か僕はその卵に運命的な物を感じて、




















 ―――――――気付いたらその卵を買って、店を出ていた。



 店主が言うには、付属している解呪の本を魔法使いに見せて呪いを解呪して貰い、早くて翌日、遅くて3日後くらいには生まれて来るらしい。そしてその間に魔力を与えると、成長を促進させて生まれた時から既に成体になっていると言う事も可能らしい。



「その解呪の本、見せて貰えますか?」



「あぁ……良いぞ。むしろこちらから頼む所だった」



「ですね。恐らく魔法使いか何かと結託して、あのお店のご主人は呪いを解呪するのにも向こうでお金を払わせるのが目的なんですよ」



「……だな」



 何故か、とあるお店には魔法使いが多く居るから解呪をお願いして貰ってはどうか、なんて言う胡散臭(うさんくさ)い台詞を店から出る前に貰った訳だ。その可能性も考えた方が良いだろう。



「私が解呪をします。あと、魔力を与えると言うのも出来るなら私が……」



「いや、良いさ。それにぴったりのスキルがあるし」



 ユラギーンを倒した際にいただいた、『操り人形(マリオネット)』。このスキルの説明に、対象の物体に魔力を込めやすくなると言う記述があった。つまりは、魔力を込めやすくなっていると言う事。魔法に関してはまだまだ紅葉の方が上だと思うけれども、この卵から生まれて来るのには僕の魔力を使って生まれて来て欲しいと思う。

 紅葉に任せてばかりだと、紅葉の方をご主人様だと認めそうで怖いと言う事もあるのだけれども。



「早速、宿屋を探して卵を孵化(ふか)させてみよう」



「そうですね」



 僕はそう言って、紅葉と共に手ごろな宿屋を散策し始めるのであった。















 その日の夜、2人の知らない所で死神同士の交戦がある事を2人はまだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ