アースソナー
ヴェルモットクレイ戦から使用している僕の魔法、『アースソナー』。
僕が手に入れた魔法のこれの効果範囲は、ヴェルモットクレイの戦闘の時よりも明らかに範囲が拡大していた。前が半径500mだったのに対して、今は半径1kmと言う所だろうか? それに前よりもさらに高密度に振動を感知出来ている気がする。
(ここから北にしばらく行った先に……沢山の人の気配を感じる。どうやら街、なようだな)
先程、"1km"と明言したが、それはあくまでも正確な、本当に正確な情報を掴む事が出来ると言う意味での話だ。距離が遠くなればなるほど、正確さはないが漠然とした情報ならば掴む事が出来る。その漠然とした情報で、沢山の人の息吹の振動を地面越しに感知した僕は街の方向を見つけた。
正確な大きさ、それに人の人数は分からないがそれなりに大きい街である事はアースソナーから掴めた。
「紅葉。北の街だ」
「了解しました。スピリットヒアー!」
紅葉はそう言って雷属性の魔法を発動させる。スピリットヒアー、紅葉に言わせると精霊に魔力を渡して精霊に頼んで情報を得て貰うと言う魔法との事。けれども、その場所を住処として人間に力を貸してくれる精霊は少なく、なおかつ頼める範囲にも限界があるそうだ。
「今、北の方向に精霊を送ってそこにある街を調べています。どんな街かは精霊の素早さならばすぐに見つけられるでしょう」
「そうか……」
と、紅葉がそう言う。
紅葉のスピリットヒアーは遠くの場所を探知出来るが、沢山の場所を探知する事は出来ない。そして僕のアースソナーは近くの場所しか正確に探知出来ないが、それでもどこに人が多いかは探知出来る。だから僕のアースソナーで探知する方角を判別して、紅葉のスピリットヒアーでその方角にある街の情報を探って貰う。僕達が取ったのは、そう言った作戦だった。
「しかし……起きたらこんな場所に居るなんてびっくりですよ。けれども、朝比奈さんを守りませんと。今は姫もユリエル姫も居ないんですからね」
しかし、紅葉よ。そこまで気負わなくて大丈夫だ。僕も成長しているし、2人もそのうち追いついて来ると思ったからだ。
「あっ……精霊達が帰ってきました」
「速いな。で、なんだって?」
「都市の名前は……誕生都市ローレライ」
ローレライ。聞いた事が無い名前だし、誕生都市と言う名称も良く分からない。
「なんでも、街であると言う他に、『魔物使いの里』とか『奴隷が作りやすい』とか、『金が全て』とか聞こえるよ?」
良く分からない説明である。ともかく一番近くの街はそこみたいなので、情報を集めるべく、僕達はその街、誕生都市ローレライに向かうのだった。