神に歴史あり(4)
―――――――それから数日後。私はアバユリ兄さんのお見舞いに来ていました。
あの事件の話をしましょう。
【身内殺しの死神】、シューバッハの火炎放射器によってアバユリ兄さんは顔に火傷を負いました。その後、シューバッハは止めを刺そうとしていたんですけれども、アバユリ兄さんはそれを一撃で倒しました。そしてその後、アバユリ兄さんは倒れましたので、私はアバユリ兄さんを連れて神様の病院へと連れて行きました。
その後、アバユリ兄さんは治療を受けました。その間に日向ラファエルが戦女神達でも倒せなかった【機械殺しの死神】、リュクールを倒して捕まえて皆に褒められていました。リュクールとシューバッハの2人の死神を逃がしたのはラファエルだと言うのに、皆、どうしてそれで褒める事が出来るんでしょうか? やっぱり後の無駄にカッコいい主張が良かったんでしょうか。私は良いとは思わなかったんですけれども。
兎にも角にも、学園には平和が戻り、アバユリ兄さんだけが顔に火傷を負って入院している。皆、お見舞いには言っているらしいんですが、私はどうにも気遅れしてしまって出遅れてしまっていました。だってアバユリ兄さんが顔を火炎放射器で焼かれたのは完全に私が原因であり、私はそれに対して何も言い訳する事が出来ない。アバユリ兄さんの所にはすぐさま行きたかったけれども、それが原因で私は気おくれしてどうにもすぐに行く事が出来ませんでした。
まぁ、他にもいくつかちょっとした事件はありました。
戦恋メモリアルさんの親友さんの人間が人間への転生への輪廻の輪に飲み込まれたり、高位の死神が1人脱走したり、ラファエルさんが適当に作った魔王が【ヒメハジメの街】なんて言う可笑しな街を作ったりと。まぁ、些細な、本当に何も関係ないどうしようもない出来事です。
(きっと……怒ってるんだろうな……アバユリ兄さん。だって、顔が焼かれたのもそうだし、お見舞いにここまで遅れたのも文句を言うのかもしれません)
何にしたって、私は怒られるに違いない。私はそう思いました。
花屋で買った一番値段の高い花束をせめてもの贖罪の品として持って、私は持ってお見舞いに行きました。
病室の前にはアバユリ兄さんのクラスメイト、そして部活の仲間達が居ました。男性や女性などが混合しているその中で、何故か私は女性を見るのを見て何だか嫌な気持ちがしました。
「し、失礼します」
私はそう言ってその沢山の神様達の中を割って入って、アバユリ兄さんの所に行きました。
「やぁ……ようやく来たか。ミランダ」
私の姿を見て、アバユリ兄さんはニコリとした笑顔をこちらに向けていました。
―――――――"見ているのが心苦しくなるような火傷付きの顔で"。
「……ッ!」
「あ、あぁ。この顔かい? どうやら治療系の神様達の精一杯努力したらしいんですけれども、やっぱり死神の攻撃って言うのは他の一線を画すくらいの攻撃らしくてね。治療不可能の攻撃だったらしいんです」
治療不可……。それって……。
この神様達の世界で、治療系に特化した神様達が治療を出来ないくらいの攻撃って、どれくらい治療不可なんですか?
「まぁ……他の皆も気にしないって言ってるし。明日からはそうだな、般若の仮面かガスマスクで火傷を隠して学校に登校するつもりだし。それに治せないと分かっている以上は、私は気にしないからね。お前も気にするな」
「で、でも……」
私はそう言って、言葉を繋げようとはしたんですけれども、どうしてもその言葉は繋がりはしなかった。だって、その前に兄さんがとても良い笑顔で私にニコリと笑っていたから。
「―――――――家族である以上、兄である以上、私が妹を守るのは当然だ」
その言葉に私はキュンとしてしまって、私は
本当に兄さんに真剣に恋をしてしまったんだなと思いました。
後で知ったんですけど、あの火傷の傷はどうも治せたらしいです。けれどもそれをアバユリ兄さんがわざわざ治さないで欲しいと頼み込んだらしいです。その理由をお医者さん達に対してアバユリ兄さんはこう答えたそうです。
――――――妹を守れなかったのは私のミスだ。それを永遠に忘れないために、私はこの火傷を治して欲しくないです。
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「それ以来、私は兄さんしか恋出来ない生き物になってしまった。なので責任とって、私と結婚しましょう。アバユリ兄さん」
「……そう言うのからは解放して自身の恋に邁進して欲しいんだけどな」
今日もまた、私は兄さんに愛を振りまく。