表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
そらのおちたものf
75/266

フォルムチェンジ

『ど、どう? に、似合う、かな?』



 目の前に現れたのは、女神だった。

 吸い込まれそうな紫色の瞳、その下にはそれをさらに大人っぽくする泣き黒子(ぼくろ)。肩の辺りまで伸びる質量たっぷりな髪、『ボン、キュッ、ボン』の分かりやすい擬音では言い表せないような『ボボン、キュッキュッ、ボボン』と言う他の美人のナイスバディの女性よりも遥かにも豊満な身体つき。そしてその女性、月裏(つきうら)ラキナエルさんの背中には小さな薄い、透き通るようなエメラルド色の羽が生えていた。



『あらーん? 私にも感想は?』



 と、そう言った女性もまた、女神であった。

 太陽のように明るい、長い金色の髪を背中で髪飾りでポニーテルにしていて、山吹色の瞳と女らしい美しい顔立ち。薄紅色のワンピースを着ているが、胸があまりに大きすぎるためにボタンが上から3つが止まらずに開いた状態なために、大きな肌色の谷間がこちらを向いている。そして彼女、戦恋(いくさこ)ルルリエルさんの背中からはこの前会った時のような白い翼ではなく、月裏さんと同じように綺麗な水のように透き通った、小さくて薄そうなルビー色の羽が生えていた。



 そして2人とも前よりも遥かにサイズが小さかった。



「え、えっとその前になんで”精霊”になっているんですか?」



 と、僕はそう聞いたのだった。



 少し前、いよいよユラギーン討伐の目途が立ったと月裏さんの念話している最中に、



『今からそっちに行くわね♪』



 と言うルルリエルさんの甘えたような声が聞こえてきたと思ったら、目の前に彼女たちの姿に瓜二つな精霊が現れて、いきなり感想を求められた。それが今の僕の状況だ。

 誰だってこんな状況に遭遇したらびっくりするだろう。遠くで念話会話していた相手が、いきなり精霊サイズの小さな身体で現れたら……いや、まずそんな状況が多くあっても困るのだが。

 と、困っていると精霊状態の月裏さんが『あ、あの……』と戸惑いながらもこう告げた。



『これは、ブンレイです』



「ブンレイ?」



 訳が分からないでいると、丁寧に精霊のルルリエルさんが説明してくれた。



『あぁー、多分朝比奈君は分かってないわね。分ける霊と書いて、分霊(ブンレイ)よ?

 神様にはね、自分と体格、性格、趣味嗜好、その他全部を真似た完全なる本人のコピーを作る事が出来るの。勿論、好きな人も同じね♪』



『ちょ、ちょっとルルリエルさん!』



 何故か顔を赤らめる月裏さんはルルリエルさんにぺしぺしと手で殴っており、止めてよーと言いながらルルリエルさんが笑顔でそう言っている。なんだろう、この可愛い空間。



『とまぁ、本人その物と言っても過言ではないわ。最も、私達は偽物で、本物は神の世界の方のだけどね♪』



「は、はぁ……。でも、なんで精霊に?」



 この2人が本物に近い偽物であると言う事は分かったが、それと精霊になるのに関係があるんだろうか?



『え、えっと……朝比奈さんにも前に行ったと思うんですけど。ほら、ユラギーンさんが天界から堕ちてかなり力が落ちたって……』



「あぁ……。そう言えば……」



 聞いた覚えがある気がする。確か堕ちると神様から別の種族になって、しかもかなり弱体化するって……。



『私達は一応、堕ちている訳じゃあありませんから、普通に神の状態で降りる事も可能なんですけれども、そうすると色々と世界に負荷がかかるんです』



『強すぎる力は他に影響を及ぼす、ってね? けれども、使い魔のような魔物に転生して降りたら負荷はかなり抑えられるし、神としての能力もある程度は使えるわ』



 つまり、神の状態のまま降りたら世界に色々と迷惑がかかり、使い魔のような魔物に転生すればその負荷も起きなくなる。それに神としての能力も健在、と言う事か。



『この精霊の身体で、私達はバックアップします』



『だから、あなた達はユラギーンを倒して』



「あぁ……。分かった」



 事情は聞いている。



 僕の人生を狂わすだけでは飽き足らず、姫とユリエル姫とのパーティーの縁を切ったのもあのユラギーンだと言う。そんな彼女に僕は怒り心頭だ。



 姫がどれだけ寂しい思いをしたと思う? ユリエル姫が今日帰って来るなり、僕達の前で見せたあの無理した笑顔を僕達がどう言う目で見ていたと思う?



 ユラギーン・ナイト。



「僕は絶対、君を許さない」



 僕は聖剣と大剣を強く握りしめた。

【補足説明】

 分霊とは、本来は神を、本社の祭神を他所で祀る際、その神の神霊を分けたものを指します。

 神道では、神霊は無限に分けることができ、分霊しても元の神霊に影響はなく、分霊も本社の神霊と同じ働きをするとされており、神霊を同じように作り出すのと同じだと考えられます。



 今回は神様がそのまま降りるとかなり世界に問題が起きると考えたため、分霊化と精霊化の2つを使って、月裏さんとルルリエルさんは朝比奈君の世界に降りてバックアップをすると言う設定にしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ