魔法の練習
大剣もさる事ながら、僕は魔法の練習もしないといけない。僕はまだまだ修行しないといけないんだから。
「と言う訳で、姫と紅葉。頼んだ」
と、僕は姫と紅葉の2人にそう頼んだ。大剣の修行はユリエル姫が適任なんだが、魔法に関しては姫と紅葉の方が適任だ。と言う訳で、僕は姫と紅葉に頭を下げて頼み込んだのであった。
「うん。任せて欲しいです!」
「朝比奈さん。水臭いから頭を上げて。お任せあれ」
僕の言葉に姫はその大きな胸を誇らしげに大きく前に出して自信がある様子を見せる。そして紅葉は気にする事は無いと僕のその行動を止めるよう言っていた。何はともあれ、2人に勉強を見て貰えるのだ。ありがたいと言えるべきだろう。
「じゃあ、ね! じゃあね! まずは……」
「いえ、姫ちゃん。ここは私に任せてください。こと魔法に関して言えば姫ちゃんよりも私の方が適任です」
と、姫の行動を制止するよう呼びかける紅葉。まぁ、姫のは魔法と言うよりかは札の術と言った方が正しいし、それも正しい見方なのだろう。
「で、でも私もお手伝いしたい! ユリエルや紅葉ばっかり、ずるい!」
姫はそう言って駄々をこねるように抗議している。まるで大きな子供のようだ。実際、姫の精神はかなり子供だと思うけれども。
「……仕方ないですね。ならば姫ちゃんには……。朝比奈さん、何かして欲しい事はありますか?」
「して欲しい事か……」
正直、姫には魔法の練習を頼みたいんだけれども。けどそれじゃあ、納得してくないだろうしなー……。
「あっ、この前見に行ったら食材調達の依頼があったんだよね。確かあの依頼は受けられたし、この近くで取れる食材ばかりだって……」
「了解しました! やります!」
姫はそう言ってそのまま食材調達のために走って行ってしまった。
「……流石、朝比奈さんですね。じゃあ、魔法練習を始めましょう。魔力による物体移動、土属性の基礎的な構成魔法の観点は前の簡易的な修行で分かって貰えたと思います。ですので、今から修行するのは土属性の魔法に必要な空間把握能力です」
「空間把握……」
「はい。けれども空間把握能力と言うのは、空間と言うよりかは地中内と言うのが正しい表現ですね」
地中内……。地面の中と言う事だろうか。
「優れた土の魔法使いと言うのは、地中内の物質や物質を触れるだけで構成物質を言い当てる事が出来るようになります。そのためには構成物質の判別、振動数の受信をさらに強める必要があります。ではそのための練習をしておきましょう」
そう言って紅葉は近くに落ちていた石を数個取り出した。大きさも色も違う、ただの石だ。
「店舗などで売られている素材だとあまりにも構成物質が純粋すぎて判別しやすぎます。そのためにこう言った道に落ちている石の方が修行としては相応しいです。朝比奈さん、後で私の方でも判別はしますので、朝比奈さんはこの石の構成物質の判別をお願いいたします」
なるほど。なんとも分かりやすい修行だ。
「よし。じゃあ、その構成の識別魔法は……」
「それを言うと修行にならないので、自力でお願いします」
「……はい」
まぁ、そう簡単に行ったら修行にならないか……。
「自分なりにやってみよう」
そう思い、僕は石を1つ取った。