ラキナエルの相談(2)
「元神様……。それに主神って相当偉いんじゃ?」
さっき、メモリアルさんはその担当している神様の中で一番偉い存在を主神と呼ぶ事を聞いた。つまり、そのユラギーンと言う神様は『転送』と言う枠内に置いて最も偉い立場にあった神様、と言う事になる。そんな人に……この僕が勝てるのだろうか?
『確かに、主神は偉いです。けど主神は強さで決まる物ではありません。人格、仕事処理能力、責任ある立場に立てる人物であるかどうかを吟味して、主神と言うのは決まるんです。最もユラギーンさんが転送の主神になったのは今から約250年ほど前の事で、今では人柄も責任に立てる人物であるかの評価も最低ランクですけど』
「けど、神様って強いんじゃ?」
『はい。神様は種族の一種とされていて、全ステータスに大幅なプラス補正がされています。多分、同じレベルならまだしも、レベルが低かったりしたら勝てないかもしれません。けど、これは種族が神様だった場合です』
うん? どういう事? ユラギーンは神様ではないのか?
『神様が天から堕ちる行為、それを堕天と言うのですが、その際に神様は別の種族に転生します。ユラギーンさんは『人間』を選んだようですが……。そして堕天した神には罰として大幅なマイナス補正がされており、多少レベルが低くても倒す事は容易です』
『あっ、でも元とは言え、神様なので経験値はある程度プラス補正されていますので大丈夫ですよ』と月裏さんが教えてくれた。つまりはかなり弱くなったけれども、その代わり経験値はかなり手に入ると言うかなり良いモンスター、と割り切れば良いのだろうか?
『今のユラギーンのレベルは……25』
「25……ですか」
今の僕達のレベルは17、そしてユリエル姫のレベルは19。本来だったらここまでレベル差があるときつい気がするが、かなり弱体化しているらしいから大丈夫だと、月裏さんは言う。
『それに私、ルルリエルさん。そして先程話していたメモリアルさんがバックアップするので、安心した気持ちで戦えますよ』
ここまでお膳立てしてもらって、至れりつくせりだ。けれども、
「すいません。ちょっと待っててもらえませんか?」
僕はそう答えた。
「バックアップ、と言っても実際にこっちの世界に降りて戦う訳じゃないだろうし、戦うのは僕たちなんですよね?」
『うぇ? はい。多分、そうなると思います』
「僕は今さらそのユラギーンさんとやらを殺すのを戸惑ったりはしません。モンスターとの戦闘でいかに命の大切さは身に染みましたから」
殺さなければ殺される。それがこの世界でのルールだ。
もし僕が戸惑ったりしたら、ユラギーンが逆に僕達を殺す。殺されないためには殺すしかない。
「だから僕は、もっと力を持ちたい。聖剣はまだしも、大剣は全然扱えてませんし、それに魔法だってまだまだです。ですから修業をしたい。全ては皆を絶対に守るために!」
我ながら理想論だとは思う。けど、これが僕の考え。
もっと強くなって皆を守れるほどに、強くありたいと思う。
『……いです』
「えっ? 今、なんて言いました?」
なんか頭の中に小さく月裏さんの声が響いてきた。あまりにも小さな声だったので、聞こえきれずに僕はもう1度聞き返す。
『い、いえ! な、なんでもないです! それだったら少し待ちます。準備が出来たら出来るだけ早く、私達にご連絡を』
「あっ、はい。分かりました?」
『そ、それでは!』
そう言って月裏さんは念話を切った。
「そうと決まれば、明日から真面目に修業を始めようか」
そのユラギーンと言う奴を倒すために。僕はそう思い、眠りについた。
『カッコいいです……揺さん』