ラキナエルの相談(1)
『もしもし? 月裏です』
と、頭の中に声が聞こえて来る。その声は前々から聞いた事があるあの美しい美女、月裏ラキナエルさんの声。
「あっ。月裏さん? 今度こそ月裏さんですか?」
『は、はい? そ、そうですよ。私はメモリアルさんじゃなくて、ラキナエルです。月裏ラキナエル。裏方の神、月裏ラキナエルです』
……ようやく繋がった。さっきのようにメモリアルさんではなく、今度はちゃんと月裏ラキナエルさんと繋がってくれたようだ。
『え、えっとメモリアルさんと話してて良かったですか? 私、メモリアルさんとの話を聞いては居ないんですが……。何かあったんですか?』
「い、いえ。なんでもないけれども……。それよりちょっと暇なので話し相手に……」
流石にこの言い分は卑怯かなと思いつつ言ってみる。なにせ、神である彼女はもしかしたら凄い忙しいかも知れないからだ。それなのにいきなりコミュニケーションを取ろうだなんて虫の良い話である。
『う、ううん。気にしないで。むしろ私的には全然念話をしてくれなかったの、不満に思ってたんだからね。ちゃんと念話、してくださいよ』
「あっ、はい……」
なんなんだろう。どうして僕は念話していない事を怒られているんだろうか? まぁ、怒ってない事に関してはホッとしたけれども。
『そ、それよりも話したい事があります。これはとっても、とっても重要な事です。なので、ちゃんと聞いてくださいよ?』
「あっ、うん」
ちょっと大事な事、なのかな。ならばきちんと聞いて行こう。
『その世界にちょっと倒して欲しい人物が居るんですけれども』
と、ラキナエルさんはそう言っていたのであった。
「倒して欲しい人?」
『正確に言いますと、倒して欲しい者、と言う所でしょうか? まぁ、今は人でも可笑しくはないんですけれども。その人物は神界に居た元神様であり、素行があまりにも悪すぎるためにその世界に降り立った神です』
「元神様……」
それって、ものすごく強いって事? だって神様なんだから人間の僕なんかより遥かに強いと言う事に……。
『そして死神モトと妖鳥ネヴァンを無理矢理強奪、あまつさえあなたにそれを押し付けた人物』
えっ……? あれってただのモンスターじゃないの? そう言えば紅葉があれは神の世界に居た危険指定のモンスターだとかなんとか……。その人物はその危険指定のモンスターを強奪して、僕達にぶつけた?
いったい、何のために? 何が目的でそんな事を?
『彼、いえ彼女のそちらの世界での名前はユラギーン・ナイト。元転送の神の主神であり、あなたに倒して欲しい人物です』