死神と妖鳥 3
僕が取り出した物、それは姫に取って来させたあの城にあった火薬の残りだった。また使えるかもしれないと思い、いくらか残しておいたのだが役に立ったみたいだ。
「ふっ……!」
僕は魔力を使って火薬と、その近くにあった土を混ぜてあの時と同じように花火玉を作り出す。違うのはこの前は美しさを競って作ったけど、今は戦闘用に作ったと言う事である。
「いっけー!」
僕はその出来た花火玉を空へと飛ばし、黒い手の真ん中で魔力を使って岩を動かして発火させる。
「喰らえ! 特製花火玉!」
小さな玉には似つかわしくない大きな爆発。そして爆発が黒い手を焼き切る。その間にユリエル姫がモトの身体を飛ばした剣で貫いていた。飛ばした剣はモトの身体を貫いて外に出たかと思うと、
「……引き」
ユリエル姫が紐を引いて刀を元の自分の位置に戻して、その勢いでモトの身体は再び貫かれていた。
『キャハッ……!?』
モトはそのまま声も無く、消えてアイテムが落ちて来る。
「「火炎双波!」」
姫と紅葉が揃って大きな火炎の球を作り出し、それをネヴァンの腐りきった身体に当てる事でネヴァンの身体も消滅して、アイテムが落ちて来る。
こうして無事、僕達は死神モトと妖鳥ネヴァンを倒す事に成功したのであった。
「いやー、お見事。お見事としか言いようが無い活躍ですね」
と、眼馬さんはそう褒めてくれるが僕としては正直、やばかった。あの花火玉は試した事がないし、この前使ったのもただの綺麗さを魅せるための物だった。一応、使えるかと思ってやっては見た物の、上手く行く保証は無かった。
「良かったー」
と、僕がホッとしているとそこにユリエル姫がやって来た。
「……さっきの、あの玉の攻撃は良かった」
「い、いや。上手く行くかどうか、微妙な所でしたけど。多分、運が良かっただけです」
「……運も実力の内だよ」
そう言って、彼女は僕の背後に回り込んで、そのまま僕の頭を撫でて来る。頭の撫での気持ちよさと胸の温かい感触、「……良い子―、良い子―」と優しげな声で語りかけて来る彼女に僕はただたじたじしていると、
「むっ……! 私もご褒美を要求します!」
僕の中に入るようにして姫が入って来た。そして撫でてとでも言いたげに、頭を激しく揺らす。
「あぁ、分かったよ。姫も頑張ったね」
僕は姫の頭を優しく撫でる。姫の狐耳は嬉しいのか安らいでいるのか、どちらにしても安堵している様子で垂れ下がっており、9本の尻尾は嬉しそうにゆらゆらと揺れている。
ユリエル姫が僕の頭を微笑みながら優しく撫でて、姫は僕に頭を撫でられて嬉しそうに尻尾を揺らし、それを見ていた紅葉はクスリと可愛らしく微笑んでいた。