準備 in街
何はともあれ、武器や装備は買っておいたほうが良い。それが僕の認識だった。
幸いなことに回復には事欠かない。姫が薬草を、紅葉が治癒魔法を使うからだ。きっと2人は落ちこぼれとかじゃなく、ただ単に選ばれなかったという事であり高スペックなのだ。それがどう言う意味なのかは分からない。
神様がどんな使い魔も使い方次第では上手く異世界で生きていけるという風に設定しているのか、それともただ単にこの2人が高スペックで他がそうでもなかったりするのか。
なんとなくだが前者のほうが良いと思った。
もし仮に、神様がどんな物にでも成り上がりのチャンスの成分を含んだりしているのだとすれば、このスキル、『呪い耐性無効化』や『幸せのサボテン』にも何か役に立つ成分が含まれているかも知れないからだ。
けれどもそれは分からない。
それを月裏さんに聞いてないから。推測は推測の域を出ない。ただの考えでしかない。
そう言えば、連絡すると言っていた気がするからその時にでも買っておいたほうが良いだろう。
閑話休題。まずは武器や装備を整えよう。
まずアイテムを売り買いするお店で拾ったアイテムを売却しておく。姫が拾ったもの、スライムが落としたものなのだ。売りさばくと420Gを手に入れた。
どうやらこの『G』と言うのは、この世界の通貨単位か何からしい。これが高いか低いかで言えば低いのだろう。スライム1匹を倒して200G、そして露店で売っている焼き鳥のような物が6本600Gとなっていたからだ。やっぱりお金というのは大切らしい。
6本も買えれば十分だけれども、僕と姫で分けると量も少なくなってしまう。それに手持ちも少ないし……。
武器屋に行くが、買える物がない。
「一番安い銅の剣で800G、紅葉のも900Gが一番低い杖の値段か」
姫は動物だから除外するにしても武器がないのはつらいかと思って武器屋に行っては見たものの、アクセサリーしか買えないというのはきつい。しかも効果が『魔法耐性;小』と書かれた紅葉しか装備ができない魔法に関する小さなイヤリングで600Gだったからだ。
アクセサリーと焼き鳥が同じ値段だったため、なくなく諦めた。流石に「これが焼き鳥6本……に変わったのですか」と言われながら装備されても困る。
と言うか、そろそろ腹が減った。
紅葉はリッチで死体だから食事は必要はないとは言っていたが、僕と姫は普通に生きているために腹が減る。
街に来る途中にはスライムしかなく、流石に僕もスライムを食いたいとは思わなかったし、姫も全力で拒否していたから今まで何も食べていない。
このままだと何も食わずに、お腹が空いてのたれ死んでしまう。
異世界での死亡原因が、貧乏で食事もままらなくての餓死と言うのは流石に嫌だろうな。
うーん、でもここに居たって問題が解決する訳でもない。ただ立っているだけでは街に漂う美味しそうな匂いにつられて、余計に腹が減るだけだ。
グー、と僕の腹が食事を欲して音を鳴らす。
「……はぁ。ひもじい」
「朝比奈さん。大丈夫ですか? やっぱりここは動ける私が1人で……」
紅葉がそう言うが、途中で歩いていて野垂れ死にされるのも嫌なので止めさせた。けれどもどうすれば……。そう思っていると、
「コポン! コポコポン!」
名案があるとでも言いたげに姫が足元で鳴いた。