朝比奈の選択
「―――――――僕には冒険者としてもっと色々な場所を冒険して見聞を広めたいと思っています。それに政治も僕は知りません。僕は無知な、ただの一介の冒険者に過ぎません。それ故に僕はユリエル姫と結婚して、この城に残ると言う選択は出来ません。その旨、重々理解してくれると嬉しいです」
僕がとった選択肢。それはへりくだる事。
僕は元の世界で政治家と言う物に全く興味を持たなかった。それに日本での政治がここにでも活用出来るかどうか怪しい物だ。なにせここは日本と違って、魔法や魔物と言う物がない世界だったから。
「そうか……。そこまで言うのならば、強要は出来んな。娘のお願いも大事だが、貴公には既に恩義がある」
「そうね。私もそう思うわ。無理強いは良くないもの」
僕の対応に対して、国王様と女王様は納得してくれた。良かったよ、理解が早い優しい国王様と女王様で助かった。まだまだ色々と場所は回りたいしね。
「ふー……。緊張したなー」
と、僕は城から出て一度溜め息を吐く。なにせ値踏みするようなあのコウキ様とクイン様の視線、まさかこんな形で向こうの両親と顔合わせするなんて言うイベントを迎えたくはなかったよ。
「さて、ギルドに行く前にまずは次にどこに行くかを知るために、地図とかの情報を手に入れようかな……」
どこに行くにしても、まずは情報を得ないと。どのような街に行くにしても情報と言うのはあった方が良いに決まっている。どこかへ行きたいと言うのもだけれども。
「ゆらぎん! ゆらぎん!」
と、どこに行くかを考えて僕は姫に止められた。姫は滅茶苦茶笑顔なまま、僕の服の裾を掴んで喜ぶような素振りを見せている。
「何かな、姫?」
「地図を探すよりかは! 良い考えがあるの!」
「……一応、聞こう」
彼女はもう服の裾ではなく、腕に抱きついている。彼女の胸元にある大きな胸の柔らかな感触が腕に押し付けられている。もはや彼女に対して突き放す事が出来ないであろう。そんな状態にある僕にその状況を作り出している姫はニコリと笑いながら、僕へと囁く。
「――――私とデートしようよ、ゆらぎん!」
そう言って、姫は僕の腕をがっしりと掴んでそのままデートへ連れて行かれてしまった。