5日もすれば人は成長する、状況は進展する
「えっと、レベル15を超えた辺りでこうなっちゃったんですよね」
と、後からやって来た紅葉がそう説明してくれました。
「そして職業の欄がニートになっていたので、仕方なく呪術師と言う職業になったと言う訳なのです」
至極丁寧に、そりゃあもう何でここまで丁寧に教えてくれた。その間、説明されていた当人である姫はずっと僕を後ろから抱きついていて、頭を重点的にすりすりと撫でていた。なんでだろう、彼女はさっきからずっと頭ばかりに集中して撫でている気がする。そんなに僕の頭がお気に入りなんだろうか? ……そう言えば、姫は頭の上に居る事が多かったな。うん。その影響だったりもするのだろうか?
「分かったよ。とりあえず、呪いを解いてくれてありがとう、紅葉。君のおかげで助かったよ」
「……」
何故か紅葉は固まっている。しかも若干ながら顔を赤らめて。
「……いやー、なんだか照れますね。この依頼を取って来てやってみてはと提案したのは私ですし、それにこうなるのは分かっててやってくれるように頼んだんですけど。こうやって改めてやられるのはなんだか照れると言うか……」
「そう言う物なのか?」
僕には分からないような感覚だけど、彼女的には納得出来たりするのだろう。分からないけれども。
「ゆらぎん! ゆらぎん!」
と、そのような事を思っているといきなり頭がゆらゆらと、いやブンブンと激しく揺れる。誰でも無い彼女、頭を掴んでいる姫の仕業である。姫……思えば小動物状態の時からこんなキャラだっただろうか?
僕が覚えている限りだと、色々な物を知らず知らずのうちに取って来たり、僕の頭を定位置にして陣取ってみたり、時折服の裾を掴むくらいだと思っていたのだが……人間状態だとここまで違うのだろうか?
「紅葉ばかりじゃないよ! 姫も沢山、お手伝いした! お肉も、お野菜も、魔物退治も、それから採集も……それからそれから……」
「あぁ、うん。分かってる。姫も頑張ってたんだよね。ありがとね」
僕はそう言って、頭の上にある彼女の頭をすりすりと撫でる。一瞬、腕が吊るかもと思ったけど、姫が頭を低い位置まで下ろしてたのと、レベルアップによる筋力増強によってそれも問題なく出来た。
「コポンー……。これだけのために生きていける―……」
「大げさだな、姫は」
ニコリと笑う僕。満足そうな表情の姫。そしてそれを慎ましい笑顔で見つめる紅葉。
今、この部屋は自然と笑顔に包まれた、微笑ましい場所になっていた。
「……けれども朝比奈さん。物事はそう簡単な話では終わらなくなっていますよ」
と、紅葉は突如、思い出したかのようにそう切り出した。そして紅葉がその事を言った瞬間、頭が痛む。どうやら姫が強く頭を掴んでいるらしい。
「お、おい。姫、痛いって! で、紅葉。何があった?」
「はい。それはですね……朝比奈さんに結婚のお話が来ています」
と、紅葉はそう言った。
……え? 僕が寝ている間に何があった?