天見アバユリの個人レポート第128978号
【天見アバユリ個人レポート第128978号。
題名、地上界へ落とされた転移の神の主神である前任者についての個人的レポート。
これは私、天見アバユリが個人的に必要かと思い書くだけの、超私事の内容を書き記した物の第128978号である。故に個人的主観、個人的観点が入るがご理解いただきたい。本来であればこう言った物事の記録やレポートをする神が居るのだが、昔今の記録の神の主神にレポートの指南をする機会があったら、異常と思えるまでに気に入られてしまい、時々こう言った形でレポートを書く事をお願いされるようになってしまった。
本当に迷惑な事である。困った者が居るのならば上司や同僚として接するのは当たり前で何でも無い事であるはずなのに、その事をいちいち感激されても仕方ない。まぁ、別に困っても居ないのだが。頼られる事は悪い事とは思えないし、それにこのお返しはちゃんとしてくれれば良いだけだ。なに、ちょっと感謝の一言でも貰えれば私としてはもう何も言う事無いのだ。皆が過剰に感謝を示してくれる行為には少し困ってしまうだけだから、ちょっとした行為で構わないから、過剰な感謝は止めて欲しい物だ。
話が逸れてしまった。本題に入ろう。
主神が変わる事は大して珍しい事とも思えないが、後任者は前任者がどうして失敗したのかを理解してどのように失敗したかを理解して成功に結び付けて欲しい。私は失敗を失敗として落ち込む行為には程ほど理解は出来ないけれども、失敗をバネにちゃんと立ち直っている行為には感激する。なに、落ち込んだ時は時間がある時にでも私が慰めてあげますから、その時はギルドの神である天見アバユリの所に来てくれれば嬉しいと思う。
神様において一番重要視されるべき事なのは、たった2つである。仕事に私情をはさまない事、そして1人の人間に嫌がらせをしすぎない事の2つである。
その面で言えば、転送の神の主神である前任者、夜比奈ユラギーンはその二点をきちんと守れなかった大馬鹿者である。
彼、夜比奈ユラギーンの横暴の始まりは、かれこれ10数年前と言う神にとってはつい最近の事である。彼がいきなりだがいきり立った。とある少年を見つけたからである。
『朝比奈揺』
どこにでも居る、普通の地上の人間ではあったんだが、それをユラギーンがどうして興奮したかを個人的に聞いた所、
「こいつ、俺様様の名前にそっくりじゃねえか! ゆるせねぇ! 俺様様のこの高貴な、崇高な、そして誇り高い名前とうり二つなんて最悪最低、悪逆非道、極悪鬼畜の所業であるために、こいつは俺様様の手によって痛めつけて差し上げようじゃないか! 俺様様の名前を似せて語るなど、俺様様の怒りを知るが良い!」
ユラギーンはそう言っていた。その時はただの冗談だと思っていたのだが、ユラギーンの所業は違っていた。
まず手始めとして、彼の運を最低最悪の物に調整していた。それは後でこちらで調整していたのだが、それが数十回数百回と続けてしまって、後始末には大変苦労した。それだけならば問題は無かったのだが、彼の行動はエスカレートしていった。
酷かったのはそうだな、彼が大学生の時の話である。彼は運命の赴くままだったら、20歳の時に運命のお相手である女性、城嶋理香と言うお嬢様と結婚するはずだったのだが、その2人の初めての出会いイベントの前に朝比奈揺の妹に病気をやって彼はその妹の看病のために大学を中退、その後妹の病気が治ったけれども、働く気力を失ってしまい、朝比奈揺はニートになってしまった。
その事をユラギーンは、そう言った人々の大まかな運命を決めている神様、戦恋メモリアルに抗議されて、ユラギーンは謹慎処分を受けた。謹慎処分よりも反省文を書く事の方が彼にとっては苦痛だったようだが。なお、今回の第4王女の出会いも戦恋メモリアルが彼が地球に居た際に城嶋理香と言う金持ちのお嬢様に出会わせなかった事を後悔しての行動である事も書き記しておくべきであろう。
そしてユラギーンが地上界から堕落した理由の最も大きな理由は、この前の例外的な朝比奈揺の異世界転生である。いや、あれは異世界転移と言うべきか。なにせ、朝比奈揺は別に死んだわけではないのだから。朝比奈揺が呆然と日々を送っている時に、ユラギーンが死者に使われる死者転生の術によって、呼ばれたのだった。それに乗じて試練の神である日向ラファエルは、裏方の神である月裏ラキナエルが余り物を押し付けたんだけれども、それはこの前の第128977回の個人的レポートである【世にも珍しい余り物異世界転生】にて説明しているので説明は省かせて貰おう。
朝比奈揺を神の住まうこの世界から、識別異世界名ノーマイルへと転移する際に、彼の『闇』属性の魔法属性を奪っていったのだ。また本来彼には『土』属性の魔法、指定した地点に爆弾を作り出して爆発させる魔法、【地点爆弾】を与える手筈だったのだが、勝手に【アースソナー】を渡す事に変更した。
あまりの横暴さ、そしてそれを行った理由を聞くと、
「俺様様がここまで痛い目を見せているのに、改名のかの字も見せない彼を追い詰めるのは全く持って関係ないだろう。俺様様がやる行為は何も問題は無い! 俺様様の行為は正しく、そして正義である!」
全く持って反省を見せない彼を見て、彼は地上界に堕とされたのであった。
この事で何が言いたいかと言えば、誰か1人を執拗なまでに追い詰めると言う事をしたらいけない。夜比奈ユラギーンの二の舞にならないためにも、そう言った横暴的な行為は避けるべきであると言っておこう。
ちなみに夜比奈揺の飛ばされ先は本当ならば識別異世界名ヘルロンドに飛ばす予定だったのだが、彼が最後の最後に残された識別異世界名ノーマイルのどこかに飛ばされた事が確認された。なお、夜比奈ユラギーンは異世界に堕ちる際に、彼の武器である魔力を込めればその魔力の属性が何かを判明出来る神紙フォーマット・アサルティと朝比奈揺から奪った『闇』属性を奪って堕ちた事が判明している。
以上、ギルドの神の主神、天見アバユリ。
個人レポート第128978号】