光の魔道師
僕、朝比奈揺は緊張していた。
(いくら姫様に会わないと仕方ないとは言っても、騙すと言うのはあまり気が置けないですね)
まず、『光』の魔法使いと言うのもただのハッタリである。本当はそんな属性の魔法なんて使えないし、同時に今僕が使えるのは『土』属性の、しかもちょっとした程度の魔法しか使えない。1時間程度の練習だと出来る事も少ない。
でも、やれる事を総動員して誤魔化さないといけない。コウキさんとクインさんの2人を騙して、ユリエル姫の呪いを僕に移して、紅葉に治して貰わないと。そのためにわざわざ慣れない低音の声を出したのだ。
(そのためには彼女に会えるために、この2人には誤解して貰おう)
僕が演じるのは、『光』の魔法使い。
治療に長けた世にも珍しい属性を使う、高名そうな魔法使いだ。
「では、早速。『光』属性の証拠である魔術、シャイニングシャワーを見て貰いましょう」
「「シャイニングシャワー?」」
「まぁ、所謂光を宙に飛ばして、その光を辺りに散布する魔法です」
僕はそう言って、黒い砂を取り出した。ただの砂では無い、これは火薬だ。最も、普段火薬なんて物と触れる機会や見る機会がない2人には分からないでしょうけれど。
先程、こっそり姫に頼んで城を散策して少々拝借した物だ。
「ふっ……!」
僕は魔力を使って、その黒い砂を丸い球状に固める。そして土の一部も入れて置く。これは後に必要となるからであり、本当ならば要らないんだけれども。
そして僕は、その球を空中へと思いっきり放り投げる。そして天井付近にまで飛んだのを確認してから、僕はさらに魔力を使って魔法を発動する。
「はっ……!」
とは言っても、これは魔法でも何でもない。魔力によるただの物質移動。遠距離にある物を魔力によって動かすだけの、魔法にも満たないただの魔力による移動操作である。魔力を宙に飛ばした球、その球にあるお互いの石をぶつけて火花を発生させる。そして発生させた火花は、火薬に乗り移って火薬は威力を生んで爆発した。
そして赤い火花や、青い火花、黄色い火花がその球から出て行って綺麗な火の球が落ちていった。
「これは……?」
「これこそ、光の球から色鮮やかな火花を放つ魔法術、シャイニングシャワーです。これこそが『光』の属性の魔術であり、私が『光』属性の魔法使いである証明です」
「「おぉ……」」
こうしてコウキさんとクインさんの2人は、僕を一応『光』属性の魔法使いとして認識してくれたのであった。そしてユリエル姫へと会う事を許してくれたのであった。
―――――――――ちなみにこの球は、ただの火薬を魔法で再構成した即席の花火である。