宮廷に現れし魔術師
そうして兵士に呼ばれて連れて来られたのは、可笑しな2人組とペットであった。
黒髪の平凡そうな顔をした赤い服を着た男性、顔色の悪そうな顔をした白いローブを着た魔法使い。そして男性の頭の上には金色と茶色が混ざったような毛並の9本の尻尾を持つ小動物。
「1人では無いようじゃな」
「そのようですわね」
別に何人か徒党を組んで解呪をしようとしている連中は少なくはない。数人で力を合わせて解呪をなそうとする連中は少なくはないし悪いと言う訳でも無い。けれどもそう言った徒党を組む者達は全員が解呪の魔法使いだったりとしていたはずなんだが、珍しいなと2人は思っていた。
「と言う訳で、どちらがユリエルの病気を治すんじゃ?」
と、コウキが聞くと徒党を組んでいた連中と同じく、「「2人でです」」と答えた。その後、あの男性の頭に乗っている小動物が変な鳴き声を出していたが、コウキとクインは無視した。
「ほぅ……。では、どの程度の魔法の実力か見せて貰おうじゃないか。まずはそちらの女子からじゃ」
「はい」
そう言って、ローブを着込んだいかにもな魔法使いな女は水を手の平に出現させる。そしてその水を空中へと飛ばし、そして弾けさせる。弾けた水は的確に花壇の花へとかかって、花に潤いを与えていた。
「へぇ……。じゃあ、そっちの男性は?」
と、クインが聞くと、隣に居た女がさっと前に出て言葉を告げる。
「すいません、ご紹介がまだでした。彼の者こそは私とそこに居る世にも珍しい生物の主、ユラギ様であります」
「コポンッ!」
そう言われて怒ったのか、あの小動物は女魔法使いの手をガシッと噛む。
「痛っ! 姫ちゃん、やりすぎ!
……ゴホン、失敬。この方は呪いのスペシャリストな魔法使いであられるため、必ずやユリエル姫の呪いを解いて御覧に入れます」
「ほぅ……。しかし言葉だけでは証明にはならん。証拠をみせい」
と、コウキは告げる。ただただ言うだけならば誰でも出来る。そう言った連中はユリエル姫に何かをしようと企んでいる良からぬ連中なために、2人は心配していた。故に何か証拠を出せと言った。
まぁ、あのチャイルド・エターナルを受けてもなお21歳以上まで生きた伝説のあの男、ヒカルのようにユリエル姫を何かの魔法でそうすれば良いんじゃないかと言う詐欺師の男は帰らせた。何せあの男は「証拠は?」と聞くと途端に顔に汗を垂らして焦っていたから。あれは確実に嘘だと判明した。この男性もそうである可能性もあるから、安心は出来ない。
「……分かりました」
厳かな、落ち着いている声が男から聞こえている。平凡そうなあの男には似合わぬどっしりした、深みのある声。
「では、これより皆さんが見た事のない属性、治癒に最も長けた属性、『光』属性の魔法をお見せ致しましょう」
そう彼は語ったのであった。
ちなみに平凡そうな男は朝比奈、女魔法使いは紅葉、小動物は姫です。