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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
P4'Golden-Prinsess4th-
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アトラシ王家

 ギルドに第四王女であるユリエル姫にかけられた呪いの解呪を彼女達の両親が頼んだのは、一種の賭けだった。宮廷お抱えの解呪専門の魔術師や他の街から呼び寄せた魔術師も、彼女の呪いを解く事は出来なかった。



 ユリエル姫は18歳になり、美しい、絶世の美女とも呼んでも良い女性ではあったが、まだ結婚相手は決まっていなかった。何故なら、彼女にかけられた呪い、チャイルド・エターナル、通称、成死病(デス20)は彼女が20歳まで生きられない身体である事を示す要因でもあり、他の貴族達もいくら絶世の美女とは言え、20以上生きられる可能性が少ない女性を貰ってはくれないと言う状況を生んでいたから。



 せめて20歳以上に生きられるようにと、彼女に剣を教えたらみるみる上達したが、結局体力も伝説のあの男レベルまでにはいかなかった。



「あぁ、なんと不幸な娘よ! あの美しさならばどこへなりとも嫁に出しても恥ずかしくはないし、あの剣術の腕ならば名を残す事も出来ただろうに! 呪いさえなければ彼女の好きな事をさせる事が出来たのに!」



「あぁ、あなた。落ち着いて」



 父親でもあり国王でもあるコウキは何も出来ない自分を嘆き悲しみ、母親でもあり女王でもあるクインはそんな夫を慰めていた。



「ギルドからは多数の、依頼を受けて来た者が来たじゃない」



「だが、どいつもこいつも期待外れじゃった!」



 そう。既に20人以上。そこに依頼を受けて来た者達はろくな者が居なかった。



 伝説の薬草を持って来たと、ただの野草を持って来た馬鹿な男。

 体力をつければ万事解決と、必死に栄養ドリンクを勧めようとする商売人の女性。

 今のうちに子供だけでも作って置きませんかと、子作り目当てでやって来た下種な男。

 魔法も使えないのに、解呪出来ると宣言した(やぶ)の魔術師。

 エトセトラ、エトセトラ。



 どいつもこいつも、ろくな奴が居なかった。



「私が一生懸命、各街などに働きかけて呼んだ選りすぐりの人間でもダメだった事を、今さらこの街に居るギルドの職員が治せるとも思ってはおらん! せめてもの悪あがきとやってみただけだ!」



「あなた……。希望は捨ててはダメよ。あの娘(ユリエル)も頑張ってるのに、私達が諦めたらダメじゃない」



「あぁ……。そうだな」



 と、そこでようやく落ち着いたコウキ。そして国の兵士の者に伝令を出す。



「次の者をここへ」



「はっ……! ただちに!」



 兵士は自らに与えられた任務を果たすべく、依頼にて集まった者達が居る控室へと向かって行った。



「そう言えば、クイン。他の子達は?」



「第1、第2王子と第2王女は嫁いだ先で問題を起こして、こっちには戻れそうにないわ。第4王子と第7王女は揃ってラブラブすぎて、そう言う理由でこっちに戻って来る様子はないわ。第5王子は武芸の道を究めると離婚して武者修行中、第6王女はこの前病に倒れたらしいわ。あの子、元から病弱だったから」



「となると、この国の行く末を任せられそうなのは、第3、第6王子と第1、第3、第5王女の5名か……」




 コウキは前々から悩んでいた事があった。王国問題についてだ。ユリエルの件がなんらかの形でも良い。肩が付いたのならばそろそろ彼らの誰かに王の座を渡し、隠居生活を決め込もうと思っているコウキ、そのためには誰を王に推挙したら良いかを悩んでいた。



 第3王子、リューク・アトラシ。典型的な学者肌で、こだわりぬく性格なために、細かな問題にも気を配ると思われるが、こだわりすぎて肝心な問題を片付けられそうにない。

 第6王子、ヒミュカ・アトラシ。カリスマ性だけはあるが、いかんせん他人を束縛しようとしたり蔑んだりする支配願望が強すぎる者。

 第1王女、ヒスイ・アトラシ。美貌に関してはユリエルに勝るとも劣らない美女であるが、美しさの追及にしか興味がない。

 第3王女、サファイア・アトラシ。人々のために働く心優しき才女、しかし子供が15人と子だくさんで対応に追われる主婦。

 第5王女、レジナ・アトラシ。才能だけはあるが、昔からその才能をどこに向けたら良いかを悩む孤独な天才。



 どいつもこいつも完璧な王となるのに相応しい人間が居るとは言えない。王になるにはどこか足りない。

 圧倒的な才能、人を惹きつける人望、そして人を思う心。

 その3つが合わさって初めて王になるに相応しいと言えるだろう。どれが足りなくても王とは相応しいとは言えない。コウキも最初からそれ全てを持っていたと言う訳ではなく、就任して政治を行いながら身に着けた。



 将来性を見据えて、その3つが一番多く持てる人物を選ばないといけない。



「まぁ、本当ならばユリエルが一番良いんじゃがそれは言わない方が良いじゃろうな。折角助かったとしても、彼女をこれ以上縛り付ける訳にはいかんじゃろう」



「そうですね。助けてもそれではいかないですし。まぁ、今はユリエルが助かる事を祈りましょ?」



「次の方、参られました」



「ほら、次の方も来られたようじゃし」



「えぇ、そうね」



 そしてコウキとクインの2人は、次の依頼を受けた者を迎え入れていた。

 王様達も大変なのです。

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