表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
神様の電話帳Ⅱ
31/266

神、憶測する 前篇

 

 ギルドの神、天見(あまみ)アバユリの仕事は主にクエストが正しく出来ているかを判断するのが仕事である。

 クエストの中には神から(くだ)される物もあり、クエストがきちんと実行出来るのかを確認し、その重要な神様のクエストをどのギルドに下すのかを決めなければならない。さらにクエストをきちんと出来ない場合、そのギルドを潰す決断もしないといけない。その役目を担っているのが、天見アバユリである。



 天見アバユリは、常にガスマスクを付けた青い髪の男性。8本の手を生やした彼は、いつも自分に当てられた部屋で1人で作業を行っていた。



 と、そんな部屋に1人の男性が入って来た。

 闇夜に溶け込むような黒い髪を長すぎず、かといって短すぎないように伸ばした、中肉中背の人物。試練の神、日向ラファエルである。



「アバユリ、ちょっと良いかい?」



「……? なにか用かな? ラファエルさん」



 と、アバユリは聞いて来る。



「君は賢い類の神だ。にも関わらず、私がボスをあそこまでの物に変えたのに、なんでEランクにしたんだ? 君の事ならば飛び飛びでDやCにしても可笑しくないだろうに」



 と言うラファエル。

 


 アバユリはクエストの神ではなく、ギルドの神。彼はクエストの達成だけでは無く、「こいつはEだな」や「Sにしても可笑しくない」の決断も担っている。最もあくまでもギルドの幹部達にお告げとして聞かせるだけであり、決めるのはギルドの人間なのだが。

 だからアバユリが「朝比奈揺はDやCにしても可笑しくない」と言えば、すぐにでも朝比奈がそのランクに一つ飛びや二つ飛びでランクアップ出来る可能性もあったのだ。



 ラファエルとしては試練の神としてなんとなく腑に落ちない部分があってそう言う事がないようくぎを刺しに来たら、既にやられていて戸惑っている状態なのだ。



「もっともな話だ。確かに彼の力はDランク、いやCランクに値しても可笑しくはない。仲間の手助けがあったとはいえ、彼女達は彼の使い魔であり、力の一端。あれならCでも可笑しくはないだろう」



「だったら余計に可笑しいね。じゃあなんでDやCではなく、Eと即決したのさ」



「なに、簡単な事」



 そっと、アバユリは立ち上がり、ガスマスク姿のままラファエルの方を向き合う。



「DやCにしたら、お前はもっと難易度な依頼を彼に提示して楽しむだろう。そう言う姿を見たくなかっただけ。―――――――――ただそれだけの話だ」



「――――――――ぷっ」



 ラファエルは吹き出しそうになるのを慌てて抑えた。

 そう、ここで笑ったら図星だと認めるような物だ。



 ラファエルは試練の神。

 人の心配などせず、ただただ試練を与える事に情熱を燃やす神だ。しかしだからと言って、世間の評価にて「こいつがこの試練をクリアするなんて可笑しくない?」と言うような、その者に不相応すぎる試練は出さない。なにせ、それじゃあ(・・・・・)面白くないから(・・・・・・・)

 自分が出した試練を、そんなの無かったんじゃないか? と言われるような事をラファエルは嫌う。

 試練を出し、その試練を解いた人間を素直に褒め称えていた所に、何も知らない第三者が知ったような口で語るなど間違っている。試練とはそう言う物じゃない。



 故に彼は世間の評価なども考慮して、試練をどうするかを考えている。まぁ、世間の評価がない世界だと羽目を外して色々とやばい試練を出しているが。



 今、ここで朝比奈がCやDランクになっていたら、ラファエルは今以上に難しい試練を出していただろう。それを知ってて止めたのかは分からないが、知っていたとしたら彼、天見アバユリは朝比奈揺に(・・・・・)加担した事になる(・・・・・・・)



「加担した事になっていたら、月裏さんと違って君は今頃神の座から下ろされていただろう。

 なにせ、月裏さんと違って『ギルドの神』と言う神様になれる候補は山ほど居るのだから」



「……。そう、だな」



 神様にも色々と分類があり、その中には多くの神が居る物もある。例えば試練の神やギルドの神と言ったのは、日向や天見の他にも多くのそれの名に相応しい神が居る。

 月裏さんは裏方の神と言う神ではあるが、裏方の神は少ないために彼女以外にその役目をやろうとする神が居ないのだ。



 けれども、ギルドの神は少なくはない。そして主神はその神達の中で大きな力を振るう事が出来る。今は試練の神の主神は、日向ラファエル。そしてギルドの神の主神は天見アバユリだが、いつ彼らが主神である太陽の神、天道(てんどう)アマテラスに左遷(させん)されて主神じゃなくなるのもあり得るのだから。



 首は無くても、左遷はあり得る世界。それが神様の世界である。



「そして今、私は主神、太陽の神、天道アマテラスより左遷の権限を委託されている。故に今ここで君を左遷する事も、一線を退かせる事も出来るのだよ? 天見アバユリ」



「……」



 それはつまり、日向ラファエルの手によって、アバユリが主神じゃなくなり、別の神がギルドの神として権限を振るう事を示す。

 いわば、遠回しの脅迫に近い行為。



「1人のちっぽけな人間に肩入れしてるとしたら、感心しないな。天見アバユリ。

 大剣の戦女神や裏方の神はただいま絶賛人材不足であまり左遷しにくい状態にあるからこそ、彼女達は明らかに朝比奈揺に対して肩入れしているとみられても処分されない。

 けど、ギルドの神は他にもたくさんいるのだよ、天見アバユリ。

 さぁ、聞かせて貰おう。どうして彼をDランクやCランクにしないで、私のさらなる試練(嫌がらせ)の邪魔をしたのかを」

 ちょっと長くなってきたので、本日はここまで。

 しかし、日向君。マジで外道です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ