宮本デュークの帳簿
「書記の神の主神、それが宮本デュークと名乗る神である。試練の神の主神である日向ラファエルの親友であり、豆羽達と言う16の分神を作り出した天才的な神様。それが宮本デュークと言う神である。16の分神を作り際にバグが生まれてしまって、その生まれたバグの本体を持っていた月裏オボロが死亡した事によって、宮本デュークの16の分神、豆羽エゴを初めとする16の神様からバグが消えた。
それに人知れず、世も知れず、文字通り影となりてバグを葬っていた日向ラファエルは安堵するのであった。
……と、これが今回の結末なのだよ。僕としては、はなはだ不本意な、書く価値も無い、くだらない内容だね」
と、宮本デュークは椅子にふんぞり返るように座ってそう言った。それを見てこの私は呆れたような顔をして、デュークを見ていた。
私の目の前で、私の親友と呼ぶべきデュークはくだらないと言いつつ、物凄い勢いにて何かを書き記して行く。あまりに高速すぎて手が何本もあるかのように思うくらいの、本当に素早すぎる速度。それでいて字の質は1ミリ単位まで、綺麗に書き上げている事も凄すぎると思われる要因の1つである。デュークの凄さには、あり得ないほど感心するばかりであった。
「けれども、16の分神を使ったのは良かったよ。成果はあった。十分すぎるほどの成果だよ。これによって多くの世界の人間の考えを改める事に成功したよ。私は満足だよ」
「……」
「16の分神が考えを改めた世界の数、全部で約4億。正確に数にすれば、4億2946万7296の世界が改まりました。豆羽の分神によってより良き人間達になって、本当に良いですね~」
そう言いつつ、デュークは多くの書類を整理していく。
元はと言えば、簡単な話である。
豆羽のバグとやらは、本当はなかった。あったのは、ただの不調性的な物であり、それをバグまで持って来たのは宮本デューク本人の仕業である。
『人間は完璧では無い、故に誰かが彼らを是正しなければならない』
それが宮本デュークのポリシーであり、今回の騒動の発端はそれである。デュークが豆羽を意図的に人間が精神的に進化しなければならないほど悪化させ、それと対処させる事によって自然と人間的な成長を促す。
簡単に表現するとすれば、ヒーローを例に挙げると分かりやすい。
ヒーローが成長するにはただただ日常生活を送らせるだけではダメだ。そこには、そのヒーローが成長するための起爆剤、敵が必要である。
今回の場合だとヒーローが人間、敵が豆羽の端末達と言うだけの話。
実際、豆羽の端末達と言う分かりやすい敵のおかげによって、デュークが言っていたように多くの世界が救われている。短く見れば豆羽達は悪でしか無くても、長期的に見れば豆羽とは本当に良い起爆剤になっていた。
私はこの親友、デュークが起こした事件において、道化を演じていた。豆羽の端末達だけが敵としてふるまっていれば、他の神から怪しく思われ、正義ぶった神に殺されてしまうだろう。そのために所々私がガス抜きとして、色々と小さい悪を行う。
それによって、デュークの計画が上手く進んだと言う訳だ。
「全く……。お前のせいで、色々な神から嫌われたんだぞ。結婚に差し支える」
「結婚とかを気にしているのならば、うちの豆羽の端末をあげよう。きっと君好みの子も居るだろう」
「そんな気の使われ方は嫌だな。そうだな、今度お前が状況を説明して回れ。勿論、歩きで」
「……酷いなぁ。僕はこの部屋の書記仕事で忙しいのに」
「うるせぇ、天才。もう10億年後まで書記活動を終えてるくせに」
私はそう言い、デュークはそうだねと言って小さく笑った。
私、試練の神様である日向ラファエルと書記の神である宮本デューク。
間違えつつも、人間の成長のために今日も張り切ってお仕事をしています。
次回、ついに最終回を予定しております。
【ラファエルとデューク】
彼らのおかげで、人間は成長していった。