月裏オボロとゴーレム(2)
「ゴーレムと『emeth』? も、もしかして……」
僕があの文字が何か関係していないかと言うと、月裏さんが何かを思いついたらしくて、炎を纏いし、自分の翼を羽ばたかせて、そのままシールドへと飛ぶ。飛ぶと共に、シールドに書かれている『emeth』の文字を確認して、
「やっぱり、これは……」
そう言って、月裏さんは『e』の文字を消す。消えると共に、シールドが崩壊してしまって、リリーベルさんが落ちて来る。気絶しつつ、落下していくから、このままだとやばい……!
「……私が助けます」
ユリーがそう言って、長刀・アイスバーグを放って、その放った長刀・アイスバーグの紐がリリーベルさんを包み込む。包み込んだ共に、地面へとゆっくりと降り立たせる。
「やった……!」
これでリリーベルさんを取り返せた。リリーベルさんを取り戻したから硬化能力は使えない! これで先程よりもベルローズの防御力は弱まっているはずだ。
「今だ! 大剣斬り!」
僕はそのまま、大剣を振るってゴーレムの下半身を斬る。両足を大剣で斬り、ベルローズの右足と左足はそのまま地面へと落ちて行く。
「おっと……この展開もまた【寿司】! リリーベルを助けられたのは、計算外で、けれどもまだ【寿司】ですよ? 第2、第3の策を用意していますよ?」
そう言いつつ、オボロはポチポチとボタンを押すと、両足があった部分から火炎が出て来て、そのままその火炎の噴射の反作用によってベルローズは飛びあがる。そして竜の顔をした銃をこちらに向けて、発射してきた。銃からはレーザービームが発射されて来る。僕と姫、ユリーの3人はそのレーザービームを避けるために走り、走りつつ攻撃を食らわせる。月裏さんは不死鳥の特性を存分に利用しつつ、氷を纏わせたままベルローズを攻撃する。
先程までのリリーベルさんの硬化を使っていたのならダメージを与える事は出来なかっただろうが、今はリリーベルさんが居ないので簡単にダメージを与える事が出来た。ベルローズが時間が少しずつ経つと共に、崩壊していく。
「おぉ、壊れて行くねー。【寿司】だよ、クライマックスに近い展開だからとても【寿司】だよ。けど、少し不利になって来たかな?」
「止め!」
姫がそう言って、金色の札と銀色の札をベルローズのコックピットへと投げつける。投げつけられたコックピットが金色と銀色の炎に包まれて、オボロが燃え上がる。
「【寿司】ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! あ、熱い! 燃える! わたくしの、バグが……わたくしの身体が……!」
「やります!」
「……続ける」
火炎を纏った月裏さんが飛んでベルローズの身体を貫き、両腕をユリーが2本の長刀で壊す。
「や、ヤバい……。この展開は【寿司】じゃない……」
そう言って、ボタンを弄り回して、逃げようとするオボロ。そのオボロを背後から来たゼリー状の巨大な物体が包み込む。赤、青、黄、緑と見る度に色が変わって行く巨大スライム。巨大スライムを見て、オボロは怯えていた。
「ぐはぁぁぁぁ! こ、これは……ユウト? ユウトなのか!?」
「ユウト? あのゼリー状のスライムみたいなのが?」
もしかしてユウトが最後に唱えていた魔術は、身体をあの巨大スライムに変える事? そうか、多分あの姿になったらもう元には戻れないから、それでユウトは唱えたくなかったのだろう。そしてユウトなりにあの姿で、オボロに復讐をしていると言う事か。
「あれが私の弟のなれの果て、か」
と、そう言って、僕の隣にリリーベルさんが立ち上がる。
「見て、朝比奈君。まるで弟が悪のボスを捕らえているように見えない?」
「えっと……僕には……」
ただ、ユウトが理不尽な怒りをオボロにぶつけているだけにしか見えない。けれども、リリーベルさんはそうは思わなかったようだ。
「ううん、多分そうだと思うの。そう思いたいの……。せめて、一つくらいは……【勇者】らしい事を、弟はしたって……。そう思いたいの……。
そして、私はあんな姿になってしまった弟に、止めを刺さなければならない」
リリーベルさんはそう言って、巨大な魔力の塊を硬化させる。
「それは【魔王】としてではなく、1人の【姉】としてバカな【弟】に止めを刺す」
そして、リリーベルさんは魔力の塊を放ち、放たれた魔力の塊はユウトごとオボロにぶつかった。
「や、止めてぇぇ……。この展開は、【寿司】じゃなぁぁぁぁぁぁい!」
そしてオボロとユウトはそのまま塵になって消えた。
【ユウト・フランベル】
【勇者】としてオボロを捕まえたのか、それともただの八つ当たりなのか。真相は闇の中。
【月裏オボロ】
死んだ事により、ライバルの神の主神は別の神になり。豆羽のバグの大本であった月裏オボロが死ぬ事で、豆羽のバグは完全に消滅しました。