オボロを追って
月裏オボロを追って、僕、姫、ユリー、そして月裏さんの4人は走り出していた。豆羽ユウトとの戦闘でかなり時間を食ってしまっているので、もう逃げているかも知れないけれども、それでも追いつけるかもと言う事を考えつつ、僕達は向かっていた。
「け、けど、追いつけるのでしょうか?」
「……追いつけると思いましょう」
月裏さんの言葉に、ユリーがそう言う。こう言う状況で一番大切にすべきなのは、信じる心である。追いつけると信じて行動しない限りは、どうやっても出来ないのだ。だから大切となって来るのは、追いつけると信じる心だと僕はそう思う。
「そう言えば、先に行っていたはずの、リリーベルさんの姿が無かったですね」
紅葉の魔法によって、姿を消して先に【勇者軍】の基地内に入っていたはずのリリーベルの姿が無かったのは気になると言えば、木になる。もしかして、ユウトとの戦闘に負けた……? もしくは月裏オボロに連れ去られてしまった? もしかしたらそのリリーベルが先程の豆羽ユウトのように改造されて敵になって襲って来る可能性もあると言う事か?
「それには気を付けて置かなければならないな」
トト・フロッグは居ないけれども、それでも方法がそれだけと言う事は無いだろうからな。他にも方法はあるかも知れないし。敵として戦うと言う事を考えつつ、行動しないといけない。
「見て、あそこ!」
姫がそう大きな声で言う。その指差す先には、何かに乗り込もうとする月裏オボロの姿があった。それは土で出来た巨大な人型の人形だった。頭には乗り込む所があり、左腕には竜の顔をした銃、そして右腕には大きなハンマーが取り付けられている。恐らくはゴーレムだろう。いや、神様だし、普通にロボットをこの世界に持ち込んで来たとも考えられるし……。まぁ、悩んでいたって僕なんかには分からない。
それよりも重要になって来るのは、その人形の真ん中にあるものだ。
そこにいたのは探していたお目当ての人物、リリーベル・フランベルの姿があった。そして目を閉じている所を見ると、どうも気絶して取り付けられているみたいである。
「おぉ、どうも追いつけてしまってみたいですか。豆羽ユウトも【寿司】でしたが、それを倒してここまで来てくれたあなた達には本当に【大寿司】と言う言葉を贈りたいですね」
「それよりも、そのリリーベルさんはどうした?」
僕がそう語意を強くして聞くと、月裏オボロは「おぉ、怖いですね。けれども、それも【寿司】!」と言う。
「豆羽ユウトを倒しに来たので、使わせていただきました。これぞリサイクル! そんなエコ精神にあふれた私も、【寿司】でしょ?」
そう言いながら、その土人形に乗り込む月裏オボロ。
「今からお見せ致しましょう。この月裏オボロが作成していただいた超特製ゴーレム、ベルローズの餌食にしてあげましょう!」
そしてゴーレムの上部の操縦席に乗った月裏オボロは、ピコピコとボタンを押して操る。
「勿論、これにはリリーベルの能力も付属されているから、楽に倒れると思わないでくださいよ?」
リリーベルの能力と言えば、確か硬化能力。ただでさえ硬いゴーレムがリリーベルの能力でさらに硬化されてると思うと、頭が痛い……。
けれども、なんとかして倒さないと。僕達はそう思いつつ、戦いを開始した。
【ベルローズ】
月裏オボロが外部に委託して作り上げた特製ゴーレム。
芸術の神の副神である豆羽ベールが設計して、銃の死神であるローズが作り上げた。リリーベル・フランベルを取り込んで、大変な事になっている模様。