偽りの神となりし者(3)
「姫、聖剣に火炎を纏わせて貰えないか? 敵は火炎が弱点なようだし、神性も持っているから、僕が火炎の剣で斬るのが一番だと思うし」
ユリーは長刀・ボルケーノ、月裏さんは火炎の翼で火炎攻撃は出来るけれども、姫が一番炎を纏わせると言った行動が得意なのだ。だからこそ、姫に頼んだけれども。
「分かった! ちょっと待って!」
そう言って、姫は黒い札を取り出す。そしてその黒い札を姫は聖剣に張る。
「これで良し! じゃあ、後は……えっと……」
【もう仕方がないわね】
あれ……? もしかして今の声は? 夢姫? そんな事を思っている内に、黒い札が黒く不気味に光り輝き、そしてどす黒い、怪しげな炎が聖剣に纏われる。
「これで、どう?」
「ありがとう、姫」
心の中で夢姫にも感謝の意を表した僕は、その黒い炎を纏わせた聖剣を持って、ユウトの元へと向かって行く。
「落雷の一節、天雷の章」
ユウトが僕を見て、不利だと判断したのか。雷を落として僕の歩みを止めようとする。
「さ、させないです!」
月裏さんが炎を纏ったまま、魔法にて身体を大きくしてその状態で雷を身体で防いでいた。不死鳥だから、その不死性を存分に活かした防御だと言えよう。
「土流の一節、瓦礫の章」
ユウトがそう言って、土の球を瓦礫状の物体を発射して来る。
「……長刀・ボルケーノ」
ユリーが長刀・ボルケーノを使って、その瓦礫状の物体を燃やし斬る。そして僕はそのまま、黒い炎を纏った聖剣で豆羽ユウトをぶった斬る。
「ぎゃああああああああああああああ!」
ぶった斬ると共に、ユウトに黒い火炎が纏われる。ユウトは苦痛の声を喚きながら、声をあげる。
「火炎の一節……。【く、苦しい。た、助けろ】。及び、水滴の一節……【俺は神になったはずだ……なのに、この痛みは何だ】。及び、落雷の一節……。【ね、姉ちゃんの言う通りだった。俺が、俺が間違ってたんだ。こんなのは間違ってる】」
「な、何だ、これは?」
「もしかして、今の攻撃で意識が戻った?」
あり得ない話では無い。痛みによって意識が取り戻すと言うのは、何も可笑しな事では無い。
「―――――及び、岩石の一節……。【そもそもこんな風になったのも、朝比奈揺! 貴様が俺に姫を渡さなかったからだ!】。及び、極光の一節……。【姫さえ手に入れていれば、俺は勇者になれたんだ! 誰もが憧れる勇者に!】」
「何をほざいてやがる……」
姫のあるなしは、関係無い。こいつが【反逆勇者】になってしまったのは、ただ単純にこいつの問題であり、それをこちらのせいにするな。そんな事を思っている時点で、こいつは端から勇者なんかの器じゃなかったと言う事だ。
「お・よ・び……暗黒の……一節……。【や、止めろ……。この魔法は……】。全ての属性を……。【この魔法は止めろと言っている!】。扱いし我は……。【この魔法を使ったら、大変な事に!】。全ての魔法を複合する……。【や、止めろぉぉぉぉぉ! 止めてくれぇぇぇぇぇ!】」
「何だか、時折聞こえて来るユウトの声がリアルでヤバさを語ってる気がするんだけれども……」
異常に停止を頼んでいるし、もしかして僕達を巻き込んでの爆発とかを考えているんじゃないだろうか?
「逃げる!」
「……逃げるべきです」
「に、逃げておきますね……」
姫、ユリー、月裏さんはそう言いながら、同じように意見を発す。僕達は詠唱を続けるユウトに背を向けて逃げ出す。
「そして……我は……。【や、止めろぉぉぉぉ! 止めてくれぇぇぇぇ!】」
自業自得だと思いつつ、僕達はオボロが逃げて行った方へと走って行く。
リア友のテイクさんの新作、「ただ、至高を目指して」が投稿されました。
http://ncode.syosetu.com/n4749bx/
読んでは見ましたが、多分僕以上にぶっ飛んだ内容でしたよ。まず加護をぶった切ると言う発想が無かったです。とても良かったですから、皆様も時間があったら読んであげてください。
……こんな感じで許しておいてくださいね、編集長様。
【豆羽ユウト】
彼には自業自得と言う言葉が相応しい。また、謙遜と言う言葉を覚えて欲しい。
【夢姫】
こっそり姫ちゃんをサポート!