ボス魔物 ヴェルモットクレイ3
『アースソナー』。それは魔法の神がお遊びで作った魔法である。
身体の振動を手や足から地面に伝えて、地面と接する物体の情報を読み取ってその情報を得る魔法、それが『アースソナー』だ。雷属性にも似たような魔法、風に載せて本人しか感知出来ないような静電気を宙に放って情報を得る魔法、『イナズマタンチ』と言う魔法があるがこの2つの魔法は良く似ている。
この2つの魔法は探索用に作られた魔法であり、身体から何かを出してその出した物を使って情報を得る魔法である。『イナズマタンチ』は空中や周囲などの広範囲にわたって静電気を使って探知出来ると言う広範囲に渡って探知と言う長所があるが、短所はあくまでも大雑把な情報、だいたいの数やだいたいの位置しか分からないと言う欠点がある。そして朝比奈が手に入れた『アースソナー』は、振動を地面に伝えて地中や地上にある物しか情報を得る事が出来ないが、その代わりにその物の形状、弱点、その他などの正確な情報を得る事が長所としてあげられる魔法である。
この『アースソナー』は月裏さんがあげた物でも無く、かといって日向がこの試練をクリアするために用意した物でも無く、その魔法を作った神様が他の転生者が持って行かなかったこの魔法を彼に渡した物でも無い。これはとある神様がとある機会にこっそりと渡して、この度朝比奈さんが魔力を集中させて発現させた物である。
「アースソナー!」
僕は地面に手を付いて、そのまま地面を振動させる。魔力によって分散した振動は地面を伝ってヴェルモットクレイへと向かって行く。向かって行ったその振動は、ヴェルモットクレイの詳しい状態が分かって行く。全体を物理攻撃を防ぐためと全ての魔法攻撃を防ぐための鱗が覆っており、あの鱗を通すような強い攻撃は今の僕には存在しない。けれどもだからと言って、あいつには弱点がある。
「……あそこか」
僕はヴェルモットクレイの弱点を、『アースソナー』で見つけ出す。まさかあんな所にあったとは……。つまりあの大剣は、そのための布石か……。
「……弱点が分かったなら後はそれをやるか。2人とも、ヴェルモットクレイの背中だ! 奴の弱点は大剣に隠されていたが、奴はそこからならば魔法も物理攻撃も効くらしい!」
「背中、ですか。なるほど。大剣が邪魔で見えなかっただけですか」
そう、背中。そこに大きな傷があり、そこからならば攻撃は通る。どうしてそんな弱点があるかは分からないが、さっきまではその傷が大剣で背負われて見えなかったらしい。
「ならば、あのヴェルモットクレイをなんとかするしかありません」
ヴェルモットクレイは首をちゃんと振って、背中に敵が回り込まないようにしている。そして大剣を振るいながら、こっちに向かって来る。
「ならば、私がヴェルモットクレイの目を隠すしかありません。アースボール!」
紅葉は宙に土の球を作り出し、その球をヴェルモットクレイの目の前にぶつける。ヴェルモットクレイは魔術が効かないが、それは地面には関係ない。ヴェルモットクレイの前で土の球が割れて、土煙があがり、ヴェルモットクレイの視界は遮られる。
「今だ! 姫!」
「コポン!」
僕と姫はその間にヴェルモットクレイの後ろに回り込み、大きな傷を確認。そして僕は聖剣を、そして姫は火炎の球を作り出す。
「コポン!」
「聖剣斬り!」
まず姫が傷に炎を与えて、そしてそこに僕が聖剣で斬る。
「ぐがぁ――――!?」
声にもならない悲鳴の元、ヴェルモットクレイは倒れる。どうやら体力はさほどないらしく、一撃で仕留められて良かった。
そしてヴェルモットクレイは倒れ込み、姿が消えて、代わりに宝箱が1つ出現した。
【朝比奈揺 Lv.8 種族;人間 職業;聖剣使い初心者 HP;120/300 MP;45/140 加護;ルルリエルの加護
姫 Lv.10 種族;獣人(狸族と狐族のハーフ) 職業;なし HP;190/260 MP;245/460
紅葉 Lv.10 種族;リッチ 職業;決意の魔法使い HP;68/108 MP;4000/4900】