魔王と勇者(1)
幸せになりたい……(切実)。
今日は短めです。時間が取れなかったでは無く、キリが良い所で終わらせたので。
『居たぞ! 【魔王】のリリーベル・フランベルだ! 逃がすんじゃないぞ!』
『見つけたら殺しても良いとのお達しだ! 是非、殺しておくぞ!』
『……人間、殺している時こそが一番輝く時』
「……不味いですね。見つかってしまいました」
【勇者軍】の本拠地の中で、私、【魔王】であるリリーベル・フランベルは隠れながら移動していた。白い布に隠れながら、進んでいます。お父さんがこうやって隠れて移動する時は、白い布に隠れておいた方が良いと言われまして。本当は"だんなんとか"に隠れて"すにーきなんとか"の雰囲気が出て良いそうなのですが、残念ながら子供だったので良くは覚えてないんですけれども。
「まぁ、姿を隠すには丁度良いかも知れませんけれども」
見つけたら殺すみたいな言葉がさっきから聞こえていますし、見つからないようにお目当ての人物を見つけないと行けませんし。
【反逆勇者】、豆羽ユウト。我が弟であり、父の言葉を借りるならば劇薬。
「早く、なんとかしないと行けませんね」
父親の命令とかではなく、ただ単に1人の姉として弟の暴走を止めたいだけである。
「さて、【勇者】はっと……」
そんな事を思いつつ、【反逆勇者】であるうちの弟がどこにあるかを探す。
「なんなの、これ?」
そんな事を考えていると、壁にあからさまな物が貼ってある。
【勇者の部屋はこちら→】
「……あからさまに誘っていますね」
これは罠だとは思いますけれども、こっちに行けば豆羽ユウトが待ち構えているのは間違いない。
「……罠だと思っていても、姉だから」
そう、私は【魔王】として【勇者】と戦うのではない。
【姉】として【弟】の暴走を止めるだけ。
私はそう心に言い聞かせて、ポスターを追って行く。
――――――――そしてポスターの指し示す場所に辿り着く私。
「……ここですか」
この扉の奥に―――――――。
ゴクリと喉を鳴らして、ゆっくりと扉を開けると、そこに居たのは物凄くきらびやかな衣装に身を包んだ私の弟、豆羽ユウトが居た。
「【魔王】よ、我が軍門に下ると言うならば、世界の半分を寄越すが良い!」
「そこは言うのが逆だと思うわ、【弟】」
私はそう弟に言い返した。
【リリーベル・フランベル】
あくまでも【姉】として【弟】を止めます。
【豆羽ユウト】
【勇者】として【魔王】と対峙します。