親と子
今日はクリスマス・イブですね。皆さん、楽しんでくださいね(棒)
私、リリーベル・フランベルとその弟であるユウト・フランベルの親である人物は、父親であった。母親はもう死んでいたし、そもそもどんな人物かも聞いた事が無い。だから、父親について語ろう。
我が父親は親と言うような人物でも無かったし、人間と呼べるような人物でも無かった。善人とも、悪人とも分からないようなそんな危うい立ち位置に立っている人間で、正直直接その彼と会話を交わしていた時も、思い出しているこの時だってどのような人物だかさっぱり思い出せない。私達の人格形成の全てを担っている人物だとも言えるし、人格形成に何も関わっていないとも言える。とにかく、良く分からないと言う言葉で片付けられるような、そんな人物であった。
それは私が4歳の頃、ユウトがまだ意思もはっきりしていなかった頃の話である。私は父親と会話をしていた。と言うよりかは、父が一方的に話しかけていたに近い状況だったけれども。
「リリーベル。それにユウト。
君達のような優秀な副産物を残せた事は、私に取って一番の財産なのだろうね」
我が父親の名前は……おっと、言えない。何故かその記憶が、その部分だけが完全に欠如してしまっている。とにかく、父と表記して置けば良いだろう。我が父は、医者だった。医者と言うよりかは、医者に近い事を生業としている人だった。多分だけれども、トト・フロッグよりも医者ではない。そんな人物であった。
「リリーベルとユウトは、多分、聖者か愚者のどちらかにはなれるだろう。人の種類はその2種類しかないのだから当然だけど。私にとって、この世の人間は聖者と愚者しか居ないのだから、そのどちらかになるのは当然……か。まぁ、リリーベルとユウトは、そんな聖者と愚者にしても、とびっきりの聖者か愚者になるだろうね」
ハハハ、と笑いつつ、彼は何かをしていた気がする。と言うか、その記憶すら曖昧で、と言うか、曖昧としか言えないのだけれども。
「私の計算と計測とそれから……。あぁ、そうそう。推測だ。そうしておこう。
私のそう言う計算や計測や推測やらが混ざり合った物だと、ユラギとかユガミとかそんな名前の人物がこの世界にやって来る。どちらかは分からないけれども、そんな人物。その人物によってこの世界の命運とやらが、歪んでしまう。どう歪むかは分からないけれども、多分、悪い方向に歪むんだろうけれども? まぁ、だから今のうちに治療薬を用意しておこう。私は医者だからね。それが君達だ」
それがどう言う意味なのかはその時も、そして今でも分からないんだけれども、我が父はそう言っていた。
「どっちが治療薬になるかは分からないけれども、むしろどっちかは劇薬になる可能性すらあるけれども、とにかく君達のどちらかがこの世界の運命を正すんだ。
良いかな? きっとその時が来ると思うから、その時は立派に運命を正しておけよ? 運命を正しておけば、それ以上は運命は可笑しくならないから。
だからさ、天地を揺るがすような戦争を行う時が来るから、その時はどちらかが治療薬として役目を果たしておけよ?」
そう、我が父はそうとだけ言っておいた。
今、思えばその運命を乱す存在とやらが朝比奈揺君の事だったのだろう。彼自身は運命を揺らがしているとは思っては無いんだろうけれども。そのせいで、今のような大規模戦争が起きた原因になっているんだろうけれども。
まぁ、その治療薬と言うのは、多分私なんでしょう。そして私の弟は劇薬になってしまったんでしょう。
治療薬として私が役に立つかどうかは分からないけれども、せめて姉として弟の暴走を止める事にしましょう。
【リリーベル父】
リリーベルとユウトの父親。医者。
リリーベルが言うには、良く分からない人物。トト・フロッグよりも医者らしくはないらしい。