ボス魔物 ヴェルモットクレイ2
初めてのボス戦だが、こう言った場合の対処方法は紅葉によって提示されていた。
まず姫ちゃんと紅葉による魔法攻撃で敵をかく乱した後、そのかく乱に乗じて僕が聖剣で斬りつける。それの繰り返し。
それが得策でないと分かったら、別の方法にシフトしたりと攻撃方法を変えるつもりではあるが、まずはそれで戦うことにしていた。
「コポン!」
「行きます! フレアボール!」
姫と紅葉がそれぞれ小さな炎の球を作り出し、それをヴェルモットクレイに投げつける。追撃を狙って僕もそのまま後を追うように走る。
幸いなことか、ヴェルモットクレイはガードもせずにがら空きな状態。油断、というよりは相手にならないと言うボスモンスターとしての慢心ゆえかヴェルモットクレイはガードをしようとしていない。
「好機!」
そして火炎の球がヴェルモットクレイにあたるタイミングに合わせて、僕は聖剣をふるう。それは確かに相手の肌に当たった。がしかし、
「硬い!?」
あまりの肌の硬さ故か聖剣は肌を傷つけられず、さらには火炎の球も跳ね返していた。
ただ斬ろうとして飛び上がっていた僕、傷つけられていない五体満足なヴェルモットクレイはそれを見逃さない。腕を背中に回して、背中にある大きな黒い大剣を手に取る。
(不味い!)
ヴェルモットクレイが片手で持った大剣を振るうのを防ぐように僕は聖剣を前に出して直接的な被害を防ぐ。重い一撃、あの巨体に似合った一撃を聖剣1本で防いでいると、
「がっ……!」
後ろから強い衝撃。そう、後ろからもう片方の手の爪でヴェルモットクレイは僕に攻撃していた。爪は深々と僕に刺さり、言いようがない気持ち悪さと血が逆流する変な感触。僕はその逆流した血を口から吐いていた。
「ガゥ!」
ヴェルモットクレイはそんな僕を投げ飛ばす。床にぶつかったらかなりのダメージになると確信した僕だが、対応策が思いつかないほどその落下速度は速かった。
「ウインドオール!」
ぶつかると思った途端に、身体が和らいだ。そしてあの落下速度が嘘だったかのように穏やかに地面へと落ちる僕。爪で貫かれた身体のせいか、あんなにもゆっくり落ちたのに激しい痛みがする。けどさっきの速度で落ちるのよりかはマシだ。
「ヒールウインド!」
続いて優しげな風が吹いて、僕の身体の傷を治していく。さっきのウインドオールも、これも紅葉のおかげ。流石、リッチ。魔法使いは頼りになるし、仲間になってくれて本当に良かった。
「ありがとう、紅葉!」
「いえいえ! 使い魔として当然の責務です!」
そうこうしている間に姫が火炎の魔法を発動させ、自らに纏う。そしてそのまま突進していく。しかし魔法は途中で切れてしまい、姫はヴェルモットクレイの硬い巨体に跳ね返されていた。
「グォー!」
大剣を振り下ろそうとするヴェルモットクレイ。その先には姫の姿。
「させません、ウインドオール!」
しかし、そこは紅葉が風で姫の身体をずらして攻撃の直撃を避けた。
「……やばいですね。あのモンスター、魔法が効きません」
「あぁ、それにあの硬さ。あれは斬れない」
「コポン……」
弱点がなさすぎる。もはや打つ手なしか? そう諦めかけたその時、1つの考えが頭を過る。
「もしかして……」
僕は前に覚えたあの感覚、そう魔法を使っている感覚を思い出し、それをどんどん強めようと魔力を込める。なんでも良い、もうこれしか頼れそうなものは無い! どうか起死回生の呪文を僕に、このモンスターを倒す力を!
そうして魔力を込めていると、ピロリ―ンと言う音と共に、ステータス画面が現れる。
【朝比奈揺は『土』属性の魔法、『アースソナー』を習得しました】
(……よし! 魔法をゲットした! 後はこの魔法の能力は、っと……)
僕は急いでその『アースソナー』の説明を見て、内容を理解する。詳しい事は分からなくて良い、使い方と効果だけが今必要なのだ。
「……やれる! これならこのモンスターを倒せるかもしれない」
「本当ですか、朝比奈さん? この魔法も効かない、攻撃も通らないモンスターに勝ち目が?」
「コポン!?」
2人は怪しんでいるが、心配いらない。
この魔法は起死回生の魔法。この場をなんとか出来る可能性を持つ、僕の魔法。
「さぁ、行くぞ。ヴェルモットクレイ。反撃開始だ」
この僕の魔法、『アースソナー』を使って、僕は反撃に討って出た。
【朝比奈揺 Lv.7 種族;人間 職業;聖剣使い初心者 HP;120/280 MP;85/120 加護;ルルリエルの加護
姫 Lv.9 種族;獣人(狸族と狐族のハーフ) 職業;なし HP;190/240 MP;285/420
紅葉 Lv.9 種族;リッチ 職業;決意の魔法使い HP;68/100 MP;4000/4600】