姫の成長
「ぐっ……!」
と、僕は撃たれた身体の部分、右腕を手で血を流さないように左腕で押さえつつ、そのまま倒れ込む前に足を出して、一歩、また一歩と歩き出す。
「……セグウェイめ」
と、ユリーはそう言って、僕に銃弾を放ったセグウェイに長刀・ボルケーノと長刀・アイスバーグを放って、セグウェイの本体である銃に火炎を纏っている長刀・ボルケーノを当てて、セグウェイの本体である銃は火炎によって溶けていた。
「ゆらぎん!」
と、姫がそう言って、僕の腕を触り、そしてその傷を見る。
「……これならば」
姫は傷を見るなり、そう言い、自身の8本ある金色の尻尾を探り、そこから何かを取り出した。姫が取り出したのは、狐の尻尾と同じくらいの長さの白い勾玉を取り出していた。
そして勾玉が光り輝いたと思ったら、一瞬にして僕の傷が治っていた。
「これは……」
姫に聞く前に、姫は行動に移していた。さらに勾玉を取り出していない他の7本の金色の尻尾のうち5本からからそれぞれ物を取り出した。勾玉、鏡、そして太刀の3つであり、それぞれ白と黒に色が分けられている。そして残った2本の金色の尻尾から金色の札と銀色の札、茶色い尻尾から、黒色の札を取り出していた。
「【前】の尻尾の力!」
と、姫がそう言い、白と黒の太刀を尻尾で操る。
「玉藻前の再生と破壊を司る太刀。その太刀によって、炎に新たな属性を授ける!」
姫がそう言って、太刀を振ると衝撃波が生まれて、衝撃波は先程の岩の炎に当たる。岩の炎は【勇者軍】の水の魔法によって消されようとしていたけれども、剣の衝撃波が当たった瞬間、火が激しく燃え上がって行く。
「これは……【前】の尻尾の能力、自分の祖先の能力を使うと言う例のあれ、か」
あの白と黒の2種類がある勾玉、鏡、そして太刀。さらに金色、銀色、黒色の札。
これが姫の最後の印の力、なのか?
そう言えば、この玉藻前の力をバグが奪っていた時、勾玉と鏡、それから太刀を持っていた。けれども札なんて物は持っていなかったようだけれども……。
「今のうち!」
「……! ……そうね、逃げましょう」
「あ、あぁ」
姫の技にぼーっとしていた僕とユリーだが、姫に言われるようにして川の前へと辿り着く。
「再生と破壊を司る鏡!」
そう言って、姫が黒い鏡から出る光を川に当てると、川が割れる。その光景に驚いた僕達だが、やはりここでも姫が急がせて、僕達は先へ先へと進む。
「再生と破壊を司る太刀!」
姫がそう言って、白と黒の太刀を振るうと、セグウェイ達の居る【勇者軍】の陣地で、川を渡っているここからでも見えるほどの大きな炎が燃え上がっている。
川を渡りきった僕達だが、姫が後ろを向いて、黒い鏡と白い鏡を川へと向ける。
「再生と破壊を司る鏡!」
姫の尻尾が持つ白い鏡の光を当てると、割れていた川の裂け目が消え、そして川は荒れだした。
姫のおかげでここまでこれたが、なんともまぁ、凄まじい力だとだけ言っておこう。【前】の印、恐るべし。
【勾玉、鏡、太刀】
玉藻前の力の1つ。【前】の印の力によって、姫が扱えるようになった。
勾玉は肉体、鏡は土地、そして太刀は概念に干渉出来るようになり、それぞれ白く塗られた物は再生を、黒く塗られた物は破壊を司る。
朝比奈揺の傷を治したのは、白い勾玉による再生の結果。火を大きく燃え上がらせたのは、白い太刀による炎の概念の永続再生。川を割ったのは黒い鏡による川と言う土地を破壊した事であり、元に戻した時は白い鏡による土地の再生。
本来ならば、使い分けて行くのだが、姫はそこまで頭が良くないので、白と黒、両方を振るっているだけ。夢姫がそれの使い分けを担当している。