爆弾蛙(3)
「治療完了。さぁ、セグウェイ達よ。思う存分、痛みつけて、身体を吹っ飛ばしておいてくれたまえ」
「私はメグリに呼ばれたから失礼する」と言って、トト・フロッグは【勇者軍】の基地へと逃げていく。追いかけようと走ってみるが、それをさせないようにセグウェイ達が道を塞いで、それぞれの武器を構えて発射する。
「面倒な!」
僕は魔法によって地面を盛り上げて放たれる数多の銃弾やら砲弾やらを防いではいるけれども、近寄る事が出来ないし、どうすれば良いか迷っていた。僕にはまだ闇の引力によって相手を引き寄せる事が出来るけれども、銃弾やら砲弾やらを引き付けても、逆効果だ。意味はない。
姫の火炎攻撃も元々札を基にした物故に、銃弾や砲弾が飛び交う所に放ったら撃ち落とされて終わりだろう。ユリーも長刀を投げて相手に纏わりつかせる技だから、同じように撃ち落とされて終わりだろう。
(トト・フロッグを追いかけるのは、ほぼ無理だろう。なら、後は……一発派手なのをぶつけておくか!)
もうトト・フロッグを追いかけるのは不可能。と言うか、初めからトト・フロッグを倒す事が目的ではなくて、この【勇者軍】の本拠地を強襲する、もしくは壊すのが目的である。
「だったら、これで良いか」
僕はそう言い、壁に隠れた状態で2人を呼びつける。そして作戦を説明すると、2人とも納得してくれた。よし、後は行動に移すだけだ。
まず、ユリーの長刀・ボルケーノを貸してもらい、その刃先に大きな岩の塊を魔法にてくっつける。取れないようにしてはいるが、上手い事すれば抜けるようにきちんと隙間を作って合体させた。そしてその岩にペタペタと、姫が札を張っていく。そして後はユリーが紐を強く握りしめ、僕と姫もそれを持って、そのままよいしょっと【勇者軍】の拠点めがけて、投げる。
長刀・ボルケーノは岩を付けたまま、拠点に向かって放たれた。勿論、セグウェイ達はそれを撃ち落とそうと、銃弾やら砲弾やらを岩にぶつける。そしてひょろひょろと落ちていくのを見計らって、ユリーが長刀・ボルケーノを岩から抜く。
空中にて岩と分離し、それを僕は闇の引力にて捕えた。
「反作用!」
僕は闇の引力を逆に利用して、その岩を引き離す。引き寄せるよりも遥かに難しくて、あまり精度は無いけれども、拠点のどこかにでもぶつかれば良いと思っているのだから、精度なんて気にしない。
そして、姫が札に火炎を放ち、火炎を纏った岩は物凄い勢いとなって、拠点へと向かっていく。
『……!』
セグウェイが砲弾を用いて、その岩を壊そうとするけれども、闇の引力の反作用を思いっきり魔力を込めて、砲弾を振り切って、そのまま岩は拠点にぶつかる。そして、拠点は岩に纏われていた炎が燃え移り、【勇者軍】は焦り始めた。
「やった……!」
一時しのぎしかならないだろうけれども、これで【勇者軍】に打撃を与える事が出来た。
「……急いで撤退」
「了解!」
ユリーが言うようにセグウェイ達が怯んでいる間に、逃げるのが先決。そう思い、僕達はとことこと元来た道を引き返そうとする。
「……距離を取らせて貰うのは、こちらの専売特許であり、譲れませんね」
そう言い、そんな言葉が聞こえたと思った、次の瞬間。
―――――――――僕は銃弾に撃たれていた。