ボス魔物 ヴェルモットクレイ1
目が大きいゴブリンを倒した後、イスール洞窟を探索していると様々なモンスターを相手にしていた。蝙蝠のような翼を持つ小さなゴーレム、少し暗めの藍色のスライム、根暗そうな目つきのリザードマン。紅葉にそのモンスターの名前を聞くと、バットドール、ブラックレイ、ヒキコリザードと言うモンスターらしい。
強さで言うとバットドールが一番硬くて厄介だった。まだ斬ると言う行動が出来ない僕は叩くと言う方法で聖剣を振るっているために、その3種類の魔物の中ではバットドールはただでさえ硬い上に、背中の翼で飛んで避けようとするためにインパクトが掴みづらかったのだ。
でも斬ると言う行為が何となく分かって来た。要は草刈りの要領。相手を動かないように押さえつけて、その物を斬る。包丁で食べ物を斬ったりするのも、相手を動かないようにして斬る。これが名人芸だと高速で動く物体でもすぐに斬れるようになるんでしょうけど、僕はそんな名人芸みたいな事は出来ないから少々動く物体を斬る事が精いっぱいだ。
この聖剣はかなり切れ味が高いために、なんとなくコツを掴んだら『斬る』と言う行為に慣れ始めていた。
「コポン! コポッ!」
「はいはい、開けますから待っててくださいよ」
姫と紅葉は戦闘、と言うよりかは探索を中心にやっている。戦闘よりも宝箱を開けたり、洞窟に落ちている物を採集したりと言った事を中心にやっている。宝箱を開けるのは小動物である姫には開けられないから紅葉が開けて、洞窟の物を採集するのは主に姫が採集していた。
「けど……まだ足りない……」
聖剣と言う戦い方は何となく物にしつつあった。斬ると言う戦い方も、突くと言う戦い方も、突くと言う戦い方も何となくだが物にしつつあった。だけどもこれだけでは駄目だ。もっと他の戦い方を模索していかなければならない。これじゃあ、何も変わらない。ただ剣を使いこなしているだけで、剣術とは言えない。
それに何かは言えないが、何か掴みかけている気がする。さっき、モンスターとの戦闘の際に何か見えた気がした。それが何かは分からないが、モンスターの身体が薄く仄かに光った気がした。それから別にこれは違うのだが、何となくだが身体の中を何かが流れる感覚が強くなった気がしたんだ。確認したらMPが少なくなっていたから、なんかの魔法の効果だとは思うのだがこれが何の魔法かは分からなかった。
ともかくその感覚を忘れないように僕は戦闘を続けていた。
そして奥へと辿り着くと、明らかに今までのモンスターとは違う魔物が現れていた。
「グァー!」
般若のような面を被った黒い身体のモンスター。両手と両足の爪は無駄に長く伸びており、その身体には一切の傷がない光沢の身体。そして背中には大きな黒い剣を背負っている。
そのモンスターこそ、このイスール洞窟のボスモンスター、ヴェルモットクレイであった。
「こいつがその必要な物を持っていると言うボスモンスターなのか、紅葉?」
「多分、そうですので倒しておきましょう」
(このモンスターの持っているタヌキツネの片割れを急いで手に入れませんと)
ヴェルモットクレイは「ハァー!」と大きな雄たけびを上げていた。そして「ギャアー!」と両手の爪を合わせて音を鳴らしていた。
「行きますよ、2人とも!」
「コポン!」「はい!」
そして僕達はヴェルモットクレイとの戦いを始めたのであった。
【朝比奈揺 Lv.7 種族;人間 職業;聖剣使い初心者 HP;250/280 MP;100/120 加護;ルルリエルの加護
姫 Lv.9 種族;獣人(狸族と狐族のハーフ) 職業;なし HP;230/240 MP;355/420
紅葉 Lv.9 種族;リッチ 職業;決意の魔法使い HP;89/100 MP;4200/4600】