不本意戦闘(2)
(恐らく、さっきヒカロウさんへの攻撃を防いだのは、何……でしょうか?)
と、私はそれを思案しつつ、セメント製の剣の上にさらにセメントを塗り固めて置く。そして剣をセメントで塗り固めて、ハンマーへと生成する。剣よりも少し重くて、さらに隙が大きいし、あまり好きではない。けれども攻撃力は高いですし、ヒカロウへの一撃も高いでしょう。
「何はともあれ……。攻撃が高くないと」
私はそう言いつつ、ハンマーを持って今度はアリスの方を見つめる。ヒカロウが効いていないのならば、次はアリスの番である。あの良く分からない防御の作成は、アリスの仕業だと思いますけれども、とりあえず攻撃しておきましょう。
(ナナミ・クジョウの身体能力を借りてはいますが、死体に気を使って秒速10kmしか出せません。けれども、秒速10km以上が出せない訳では無いんですよ)
私はそう思いつつ、足を踏み出す瞬間に力を込める。ナナミは本能に身を任せていたけれども、私は違う。効果的なタイミングで関節に瞬時に力を込めて、そのまま踏み出す。これによって、瞬間的な速さは秒速10kmよりも速く出来る。
「……借り物のハンマー突き!」
そう言って、私はハンマーをアリス目がけて突きを放つ。
「やって来るのでーす! けれども、無駄なのでーす。水の壁、なのでーす!」
アリスがそう言うと、いきなり目の前に水の壁が現れて、私のハンマーによる攻撃を防いでいた。そして水の壁がハンマーの衝撃を受け止めて、そしてその衝撃が水の壁を伝わりつつ、こっちへと向かって来る。そしてその衝撃は私へと向かって来ていた。
「むっ……」
私はそう言って、地面を蹴って後ろまで行く。しかし、その衝撃波はこっちに向かって来る。そして私は衝撃を受けて吹っ飛ばされる。
「くっ……」
さっきのももしかして、水だったんでしょうか? 確かにあの感触は水ですか。水によって私は防がれたと言う事ですか。
「水……防御がだるいですね」
「当たり前なのでーす。何せ、私は防御に置いては、神なのでーす。
水とは無敵なのでーす! 液体による柔らかい防御、固体による硬い防御、気体による見えない防御。これで終わり、なのでーす!」
「そして、お前への攻撃は我がやる。我による攻撃によって、貴様は葬り去られる」
水による無敵の盾と、それの相棒である戦闘のプロ。何でこんなのと、私は戦わなければならないんでしょうか?
(そもそも、私は戦いのためにここにやっては来ましたが、このような形で戦いたくはないのに……)
私は相手の攻略よりも先に、逃げるための場所の確認をしていた。この戦闘に意味は無いし、秒速10km……いや、力加減などを考えるとすると秒速25kmまでは大丈夫そうだし、2人とも追いつけないだろう。
そんな事を考えていた時、2人の後ろにキラリと光る物を見つけた。
(あれは……もしや……)
私はじっとそこに集中して、そこを見る。そこにあったのは……見覚えのある、と言うか忘れる事が出来ないあの……。そんな事を思いつつ、見ているとあの声が聞こえて来る。
「……ばれないと思っていたのだが、仕方ない。少し距離を取らせて貰おう」
聞き覚えのある、腹立たしい声が私の耳に聞こえていた。
【アリス】
水の魔法使いであり、液体状、固体状、気体状に変える事によって無敵の防御を誇る。本人が防御のみに重点を置いているため、水を使う魔法使いの中でも彼女の防御力は異常に強い。
また、魔法とはイメージの産物なので、彼女の精神が常人とは違うと言うのも理由の1つだと考えられている。