不本意戦闘(1)
セメントを剣のような形に錬成した私は、そのまま2人を相手する為に2人の位置を確認して置く。どんな物だろうとも使いこなす事が出来てしまうヒカロウが居る限りは、私の《盗み》は意味が無くなってしまう。だから、ヒカロウに対しては盗んでも意味はありませんね。
(……出来ればアリスと言う方の武器を奪っておきたいんですが……私と戦うと言う前にそんな人材は出して来ませんか)
最初からこちらの出方は分かっている相手だし、戦い辛いなと私はそう思う。
「倒すしかないのでーす。けれども倒すのは、ヒカロウの仕事なのでーす。ヒカロウ、やるのでーす」
「あっ……や、やるのです」
そう言いつつ、ヒカロウは腰から長い金属の棒を持つ。長い金属に何かを纏わせたようなヒカロウは、その金属の棒を一振り。彼の背後の木の枝が、何かに斬られるようにして落ちて行く。
(……金属の棒を剣にでもしたのでしょうか? どっちにしても、私が盗んでも斬れませんか)
そんな事を私が考えている間にも、ヒカロウが長い棒を剣のようにして向かって来た。少し考えすぎていたと思っていた私は、セメントの剣でその長い棒を防いでいた。
「くっ……。流石、だな」
「……けど、重いです」
別に今の私自身の筋力に比べたらヒカロウさんの攻撃があんまりにも重い攻撃だと言う事で無いですけれども、あんまり受け続けてもナナミ・クジョウの身体が崩壊しても困りますのでそろそろ避けて置く。
(――――――――――――――そして2秒停止しておきます)
私はそう言って、2秒間ほど時間を停止させる。色のあった世界がモノクロの世界になって変わっていた。2秒だとどちらか片方しか攻撃出来ないし、あんまり悩み続ける時間は無い。故に折角、近くまで来ているのだから、ヒカロウを倒しておきましょう。
「――――――――――毎秒10kmの蹴り!」
そう言いつつ、私はナナミ・クジョウの身体能力を出来る制限内での最高速度の最高の蹴りを、ヒカロウに蹴っていた。
でも、その蹴りは見えない何かで防がれていた。
「な、何これ……」
蹴り終わると同時に時間停止を解除するように計算して、2秒停止していたから、蹴り終わると時間停止が解除されて、世界が色付き、動き出す。
「……むっ。攻撃があったのでーす。やっぱり、やっておいて正解なのでーす。そうでしょ、ヒカロウ君?」
二ヒヒ、と笑いつつ、こちらを見て来るアリス。
「むっ……。確かに防御能力第1位とも言われるほどの実力者なの事はあるな」
そう言いつつ、私から離れてアリスの所に近付いていた。……大変。この前は時間停止と共に攻撃して倒していたんですが、時間停止をしても防がれるだなんて。
(……あのアリスと言う人。性格的にも苦手ですけれども、戦闘的にも相性が悪いですね)
ヒカロウは私の《盗む》と言う技と相性が悪いですし、あのアリスと言う少女はナナミ・クジョウの時間停止魔法を使っても防がれてしまいますし。……どちらの人物とも、相性が悪い。
軽い気持ちで戦っていたかったんですが、とても面倒な2人組です。