対戦前の世間話
「な、何これ……」
私は積まれた材料を見て、そう思っていた。
大量の木材、それから煉瓦。藁や蔓などの植物。多分、この場所で手に入ると言う条件を付けるとしたら、かなり良い物だと思います。これを集めたら、とっても良いですね。……私、1人で集めたとすればもっと良かったんですけれどもね。
「さぁ、我らと今から勝負するぞ!」
「そうでーす! 早く勝負とやらをするのでーす!」
と、ヒカロウとアリスの2人が私を見てそう言っている。……それよりもどうして、彼らはこんなに早くやりたがっているんでしょうか? 何か事情でもあるんでしょうか?
「……どうして、あなたは私とそんなに早く戦いたがっているんですか? 理由を聞かないと、少し納得出来なくて戦えないんですが」
「うっ、それはだな……」
「簡単に言うとでーす、【勇者軍】と【教会軍】の合併は良い事だけでは無かったと言う事でーす」
……話が見えませんね。
「……もう少し詳しく」
「う、うむ。実は、【勇者軍】の中に問題児が多くてな。この前、装備を統一する為に、素行調査を行ったのだが」
まぁ、強者だけを集めた【勇者軍】ですから、性格的な問題を抱えている者が居ても可笑しくは無いんでしょう。
「――――――――その中にあろう事か、人体実験を行っている者が居てな」
「……【教会軍】としては、いえ、教会としてはそれが許せないと」
まぁ、そうですよね。人体実験なんて、教会などと言う宗教組織が許せるはずがありません。私の生前の記憶でも、宗教組織と言う物はそう言った非人道的な研究を激しく糾弾していた覚えがあります。まぁ、多くの場合において、人体実験なんてダメに決まっていますが。
「それに、【勇者軍】の中には、【教会軍】と戦うために入った奴も居たのでーす。そいつら、皆が離反して、私達はその対応と言う事なのでーす」
「……戦争の最中で戦えないから、今ここで倒すと?」
「その通りだ。我はお主に負けた。その汚名を晴らす!」
汚名、ね……。私からしたら、そんな理由で戦いを挑まれても迷惑なんですが。そもそも多分、私だけならばヒカロウは勝てたのだ。その時は【ナギサ・クジョウ】になっていたからであり、その前の私でなら多分、敗けていたのはこちらの方だろう。だとしても、私は勝ち負けにこだわらない。
(……最初から相性が悪いと分かっていたんだし。あっ、そうか。あちらからしたら、相性が良いはずなのに負けたからむきになっているのか)
なんとも、面倒な話である。
「……と言うか、そちらの面倒臭い内部事情を聴かせて、私がそれを漏らしたらどうするんです? 伝令役を頼んで、魔王様に伝える事も出来ますよ」
……まぁ、本当は私が走って伝えるつもりだけれども。
「良いのだ。お前を倒せば伝える事は出来ない!」
「そうなのでーす! 肉を切らせて、骨を断つ、なのでーす!」
……それは意味が違う気が。
そうこうしている間にも、2人は私を取り囲み、渋々私も相手する為にセメントで武器を作り出した。