悶え死に蝶(3)
そして煙が晴れると、そこには無傷のメグリと少年兵達が立っていた。けれどもそれが先程よりも不気味に見えた。
「あぁん♥ 猛毒による痛みも良いけど、爆発の痛みも最高よねぇ♥ まぁ、香水まで吹き飛んじゃうのは、嫌だけどぉ♥」
メグリはそう言いつつ、自身の着ている毛皮のコートのポケットを探り、何かに気付いたかのような顔をしている。
「……あぁ、今度はあれが無くなってしまったわね♥ 結構、好きだったんだけれども♥」
「あれが……?」
無くなった? そう言えば、少年兵士達の何人かの装備が無くなっている。ある者は剣が、またある者は手袋が、そしてまたある者は服の一部が紛失してしまっている。あの爆発によって無くなってしまったんだろうか?
「楽しくなって来たわぁ♥ あの子のおかげで、私は今、ほぼ不死に近い存在になったのだから、思う存分やるわよー♥」
「ほぼ不死……?」
何なんだろうな、一体……。メグリ・バタフライは猛毒香水と風の魔法しか書類には書かれてはいなかったし、他の人間の能力だろうか? となると、あの少年兵達の……まぁ、あんな目が死んだ様子の人間の中に居るとか、それは無いだろうけれども。
「風よ、我が指揮すべき……」
ま、拙い!
またしても、メグリが毒の香水を風によって運んでしまう。僕達に猛毒を運んでしまう。
「と、とにかくあの香水を吹き飛ばすしかない」
「ですね。なんで全員が無傷で、所々装備が無くなっているのかは分かりかねますが、猛毒の香水はやばいです」
そう言いつつ、紅葉が呪文を唱え始める。皆が唱えているような呪文と違って、2つの言葉が混ざり合ったような声がしている。今まで紅葉はそんな事をしていなかったし、前に居なくなった時に習得したんだろうか?
「風よ、放て!」
そして紅葉が言うと共に、風と水が混ざり合うようにしてメグリの元に向かって来た。けれども、メグリは今度は自身の周りに回転する風の渦に、風と水が混ざり合った攻撃をぶつけていた。
「少年兵士達よ♥ 出番よ♥」
そう言って、メグリが言うと共に、今までただ突っ立っていただけの少年兵士達がいきなり体勢を低くして、そのまま走って来る。
「紅葉を……攻撃するつもり、なのか?」
「……ですね。魔法発動の阻止、かと」
「もみじん! 守る!」
僕、ユリー、姫の3人はそれぞれ武器を構え、少年兵士達に向かい合う。僕は少年兵士を聖剣で吹き飛ばし、ユリーが長刀を放って首を跳ね、月裏さんが燃やし尽くしていた。それをする度に、爆発して煙を放つが、その中から無傷にて現れ出でていた。これは一体、何なんだろう……。
「うふふ♥ まぁ、良いわねぇ♥ けれども、私の後ろには天使と言う蛙が居る♥ なのだから、私はほぼ無敵なのよ♥」
そう言いながら、メグリは狂ったように笑っていた。それがとても壊れた、ぶっ壊れた笑みに見えた。