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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
いきなり、こんこん、姫いろは
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再会の食事会

 今朝の早朝、まだ日も昇っていないようなまだ夜中とも言っても良いような頃、魔王城の門前を警備していた兵士達によって、全身を薄汚れたローブで身を包んだ紅葉が発見された。

 紅葉が言うには、勇者軍が転送の儀式によって勇者軍の本拠地に紅葉を連れ去り、そしてそこから何とか辛うじて逃げ帰ったと言うが、何となく信じきれなかった。と言うより、紅葉の様子が何だか可笑しかった。



 日に絶対に当たらないように、かすかな光だろうと薄汚れたローブを完全に隠れるようにして自身の身体を包み込んでいたり、今までもかなり体力に心許ない一面も多かったがそれ以上に歩く速度が緩やかになっているのだ。勇者軍に気付かないように走って逃げだしたから足が疲れて、いつもよりも動きが遅いと言う事は分かるが、それにしたって絶対に日に当たらないようにしているのは、これまではあまり見なかった。今まではそれほど過剰なほどには気にしていなかったはずなのだが。



「ともかく。紅葉さんが帰って来て、良かったですね」



「良かった! 良かった!」



 リリーベルさんと姫が椅子に座って喜んでいる。今は朝食の時間、何故か日に当たらない位置を気を付けて確認している紅葉を尻目に、僕や他の皆は早々に席を決めていた。



「も、紅葉さん。こっちだったら、日に当たりませんよ?」



「そうですね、月裏さん。ありがとうございます」



 そう言って、月裏さんに指摘された椅子に座る紅葉。確かに日には当たりそうにないが、戻って来てからと言うもの、紅葉の様子はどこか変な感じがする。まぁ、それ以上に戻って来た事に関しては嬉しいですが。



「……紅葉さんの不審な行動。そして姫ちゃんの急な成長。この2つに何か関連が」



 ユリーが椅子に座って、ぶつくさ言いながら考え事をしているが、少なくともその2つに直接的な関連は無いと僕は心の中でそう思う。何せ、姫の成長は夢の世界での出来事が原因であり、紅葉はそれに関わっていないのだから。けれども、何かが気になる。



「……魔王様。お食事の準備が整いました」



「そう。じゃあ、運んでおいて、ナギサさん」



「……了解」



 そう言って、スミガタケで僕と姫と試練にて対決して、そして【在】の印をくれたナギサ・クジョウが料理を並べて行く。その最中、僕の所に食事を置く際に、



「……良かったですね。これで9個の印、全てが揃って」



 と小さな声で、『おめでとう』の言葉を口にする。とりあえず会釈しておいたが、同じように姫の所に近寄った時に、



「やったー! 9個、揃ってたー!」



 と、大喜びする姫のせいで何だか台無しになってしまったが。



「まぁ、朝から色々と理解不能な事が2つほどあるけれども、今居る事に感謝しつつ、いただきましょう」



 リリーベルさんがそう言い、僕達もそれに(なら)うようにして手を合わせて食への感謝の意を表現して、そのまま食べ始めた。

 紅葉は「ここは変わりませんね」と言いつつ、小さく笑いながら食事を食べていた。

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