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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
いきなり、こんこん、姫いろは
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おかえりなさい

 目を覚ますと、そこには大きな2つの黒い瞳がこちらをジッと覗き込んでいた。



「ゆらぎん? 起きた?」



 僕が「あぁ……」と短く返事をして、身体を起こしつつ、その黒い瞳の持ち主はゆっくりと僕から距離を取る。

 その人物は姫だった。夢姫が「姫ちゃんの身体に何か変化があった」と言っていたが、まさしくその通りだった。腰まであった髪の毛は足首のあたりまで長く伸び、身体自体も少しばかり成長している。そして神々しく輝く8本の黄金の尻尾と1本の茶色い尻尾。



 【前】の印の効果か、前よりも大人になった姫がこちらをじっと見つめていた。



「……ゆらぎん? どうかした?」



「いやー、何だかちょっと見ないうちに綺麗になったかなーなんて」



「……! うん! それが聞きたかった!」



 そう言って、こっちに向かって思いっきりダイブして来る姫。むむっ、夢姫や月裏さんに及ばないにしても確かな弾力感……って、そう言う事を考えているな! 今はもうすぐ戦争が始まるって時であり、それに紅葉だって行方不明だっていうのに!



 どうやら昨日眠りについた部屋で間違いない。状況的に考えれば、起きない僕を姫が起こしに来たとそう言う状況だろうか?



「朝! 起きたらこうなってた! 不思議!」



 姫は自身の髪の毛や身体を触りながら、そう言う。

 どうやら自身の頭の中で僕と夢姫が戦闘を繰り広げていたという事は、本人は全く知らないらしい。まぁ、無理もない。自身の頭の中でそんな事が繰り広げられているだなんて、あまり考えつくような内容ではない。



「そうか。皆は?」



「皆、下! 食堂! 紅葉は……」



「あぁ、言わなくても良い」



 居なくなった紅葉の事を思い出したのか、しょんぼりとした感じでうつむく姫。要らない事を言ってしまったのかもしれないから、心の中で反省しつつ、機嫌を直して貰うために頭を撫でて、彼女のご機嫌を取る。



「とりあえず、朝ご飯だな。分かった、すぐに行くよ」



「はーい!」



「おやおや、その朝ご飯に私は混ぜて貰えないんでしょうか?」



 と、聞き覚えのある声が聞こえて来て、僕と姫は部屋の入口の方を見る。そこに居たのは、いつも僕達の傍にいた彼女の呆れたような顔だった。



「……色々と言いたい事がありましたが、それ以上に驚きの状況ですね。姫ちゃんが成長しているわ、朝比奈さんは姫ちゃんの頭を撫でまくっているやら。全く、私が居ない間に何が起こったんですか」



 はぁ……と溜息を吐きつつ、彼女はゆっくりとこっちにやって来る。



「そろそろ朝ご飯の時間帯ですよ、朝比奈さん。姫ちゃんもそろそろ下に降りましょうね?」



「も……」



「も? 『もうすぐ行くからね!』と言いたいんですか、姫ちゃん?」



 ん? と姫の顔を見ようと近付く彼女。次の瞬間には、彼女は姫にガシッと身体を掴まれて、



「もみじ――――――ん!」



 と身体をガシッと抱きつかれていた。



「ちょ、ちょっと姫ちゃん! あんまり身体を強く抱きしめないでください。私、そんなに防御力高くないですし、姫ちゃんの身体も成長してちょっと重いですから。それにその髪、少し長いですし、後で結うべきですね」



「もみじん! もみじん!」



「ちょ、ちょっと本気で止めてくださいよ。リッチの死肉の身体が崩壊しそうですよ。や、止めてくださいってば」



 「くすぐったいですよー」と彼女は言う。そして困惑しつつも、僕に助けを求めるようにこちらを見る彼女に、



「おかえり、紅葉」



 と一言言い、彼女は



「えぇ、心配をおかけしました。ただいまです」



 と、紅葉はそう言ってニコリと笑っていた。

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