想い出のボス魔物(3)
「良いですか? 先程話した通りでお願いします」
と、夢姫が言い、僕は頷く。それを見た夢姫は、炎を作り上げていく。
「斬れる炎!」
そう言って、夢姫は銀色の炎を作り出す。作り出されたその銀色の炎は、激しく揺れながら夢姫の手の中で揺れている。
「斬って来てください!」
夢姫はそう言いつつ、バグめがけて投げつける。攻撃と魔法を無効化するヴェルモットクレイの姿を借りているバグは、その炎を見ているだけで特にどうしようともしていなかった。そしてこちらに9本の黄金の尻尾を向けて来る。
「今です!」
「OK! 地面の壁!」
9本の尻尾がこちらに届こうとした時、僕は地面から土の壁をバグの身体の後ろに作り出す。土の壁は特別重量を重く練り上げて作った特製の物である。その土の壁に目がけて、銀色の炎が向かって行き、銀色の炎は土の壁に激突する。そして銀色の炎が壁に当たった瞬間、壁に亀裂が入り、9本の尻尾めがけて落ちる。
「ガゥ……!」
ダメージはないだろうが、尻尾に乗っている土の壁の破片は重い。何せ、そう言う風に作り上げたのだから。バグはなんとか破片を取り除こうともがくが、
「そのまま地面に固定する!」
僕はそう言って、魔力を使って地面を動かして、9本の金色の尻尾の上に重しとなる土をどっさりと積もらせる。
ダメージは無い。何せ、ヴェルモットクレイの身体で唯一ダメージが通るのは、9本の金色の尻尾で懸命に守っていた背中の傷だけなのだから。
「そして、その傷は今は無防備!」
僕は大剣・無銘と聖剣・ヒカリの二剣流の構えを取る。そして、そのまま地面を魔力で弾ませるようにして、バグの背中まで跳び、そのまま振りかざす!
「二剣流、大槌!」
そして傷の上から攻撃力大の攻撃を食らったバグは、大きな叫び声をあげる。
「ギャアッ!」
しかし、まだ体力が残っていたらしく、バグの姿は消えない。
「もう1発!」
「ガァッ!」
そうしようと攻撃しようとしたら、バグの背中に取り付けられた鏡が光り輝きだす。そして眩しいと僕が目を閉じている隙に、首にかけられている勾玉を高速回転させる。高速回転によって竜巻が生まれる。そして狐面の口の部分が割れて、そこから炎を吐き出す。竜巻と炎がぶつかり合って、そのまま凄い衝撃と共に、バグはそのまま飛び上がる。
「あの激しい衝撃で、飛び上がりましたか」
「もうあの手は使えないな」
先程の地面の奴は、相手が気付かないから出来たような物だ。今の警戒しているバグだと、先程のように9本の黄金の尻尾の上に土を載せて傷を攻撃する事は出来ないだろう。
「空中に居ますしバグの視点が広くなりましたし、流石に地面の壁を落とすのは難しいですね」
夢姫はそう言う。確かにその通りである。
「……ならば、使って見ましょうか」
そう言って、夢姫が紫色の炎を作り出す。そして紫色の炎はバグにぶつかった。そしてバグの周囲を煙が覆い、煙が晴れるとこちらに身体の傷を向けているバグの姿があった。
「団三郎狸の力、化かす能力。その能力によって、あのバグの身体の神経を化かしました。それによって、あの身体は傷のある部分をこちらに向け、さらに傷のある部分を防げないように体内の傷を防げないように化かしました。今のバグならば、倒すのも容易です。朝比奈さん、今です!」
「了解したよ!」
僕は地面を魔力にて高くして、そのまま跳び上がる。跳び上がると共に、聖剣を握りしめて、狙いを付ける。
「ギャ、ギャギャッ!」
バグは必死になって9本の黄金の尻尾で防ごうとするけれども、神経が化かされている影響からか上手く操れないようだ。その間に僕は聖剣で斬る。
「ギャッ、ギャッ!」
そして斬ると共に、ヴェルモットクレイの身体から白い煙が出る。そして白い煙から、2つの青い水晶と黒い煙が出て来た。あの2つの青い水晶は恐らく、玉藻前の力がある水晶とヴェルモットクレイの水晶があるのだろう。そしてあの黒い煙はバグなんだろう。
そして黒い煙のバグは空中を飛んで行きながら、青い水晶を取り込んでいく。
「ま、またバグが姿を得ようとしている……!」
「玉藻前の水晶が戻ってきたとは言っても、相手によっては難しい事に……」
そして黒い煙が完全に青い水晶を飲み込むと、黒い煙がその姿を変えて行き……
「聴いてください、【萌えてオペラ】!」
出て来たのは、クールな雰囲気を漂わせている、凛とした巨乳美女。金色の髪と同じ色の狐耳を生やしており、姫様が着ているような白いドレスを着込んだ赤い天狗のような仮面を付けているオペラの姿で、バグが現れた。
「「……」」
僕と夢姫はどう対応をして良いか、困ってしまうのであった。
【バグ】
力が強い者の記憶を本能的に選び取ったが、それは神を殺すけれども、戦闘能力がほとんど無いと言っても良いオボロの記憶だった。