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夢姫

 目が覚めたら、何故か自分の仲間の世界だと思われる謎世界に居た。



 ――――――文章にしてみても、何を言っているんだと言う感じで、激しく突っ込まれる所だろう。



 多分、ここは姫の夢の中だとして、その夢の中に僕が入って来たと考えるべきか。だとしても、今まで何度も睡眠を共にして来たのに、このタイミングで来ると言うのは何か作為的な物を感じる。



(もしかして、これが【在】の印の能力? いや、それは違ったはず)



 紅葉が居なくなって皆であちこちを探し舞っている最中に、姫に【在】の印を返した。そして姫は【在】の印のスキルを手に入れて、僕はその内容と言うのを確認していた。確か、あのスキルの説明文には、『実体のない物を捕らえる事が出来る。そして、【前】の印を呼び起こす事が出来る』と言う説明文が出て来た。どこにも『他人を夢に引き込む』と言うのがうかがえる記述は無い。



「だとしたら、【前】の能力が問題なのだろうか?」



「いや、残念ながら【前】の能力に直接的な意味で、『他人を夢に引きずり込む』と言う物はございませんよ? まぁ、今回は私の方で呼ぶ用があったので、呼ばせて貰ったと言う事なのですよ」



 と、トントンと肩を叩かれるようにして、澄んだ声が聞こえて来る。振り向くと、そこに居たのは姫に似た謎の人物だった。

 亜麻色と茶色が混ざったような色の髪をマフラーのようにして巻き付けている、18歳くらいの爆乳美少女。藍色の和風メイド服を着ており、そして眼鏡をかけた美人さんは、こっちを見てにこやかにほほ笑んでいた。



「えっと……どちら様でしょうか?」



 姫に良く似た方だけれども、ここが姫の世界だし、誰だかさっぱりなんだけれども……。



「まぁ、直接会うのは初めてですから、初めましてですよね。私は夢の世界の姫ちゃん、通称『夢姫』と申します」



「ゆめ……ひめ……?」



 夢の世界の姫だから、夢姫と? なんと、安易な……。



「て言うか、なんか現実の姫よりも……」



「見かけの年齢が上に見える事ですか?」



 そう言いながら、自身の、多分現実で御見かけ出来ないような胸に手を置く。うぅ……動く度に揺れるから、出来る限り見ないようにしていたんだけれども。



「私はこの夢の世界の住人で、彼女の能力の管理人です。姫ちゃんの脳内にて、炎の魔法やら能力、記憶などを彼女に代わって能力を管理しているので、少し年齢を高めに設定されているのです」



 ……まぁ、姫そのものがもう1体頭の中に居たら大変な事態になりそうな気がする。主に、収集がつかないと言う意味において。



「……まぁ、そう言う訳で2歳年上に設定されているんですが、現実世界の姫ちゃんも、2年後にはこうなると思って貰えれば、良いんじゃないんですか? おっぱいが大きい方が、人間男性は好きだと思うんですけれども?」



「……ノーコメントで」



 敢えて突っ込まないようにしていたのに……。そこに触れると大変な事になる事が目に見えていたから。



「まぁ、それはともかく、今回朝比奈さんをこの姫ちゃんの夢世界に呼んだ訳はですね。ちょっとした問題があったからです。



 そう。普通に【前】の印の能力が発動して、玉藻前の力と団三郎狸の力が姫ちゃんに力が宿ろうとしたその瞬間、玉藻前の力が何者かに――――――そう、バグによって取られてしまったのです」



「……バグ?」



 なんで姫の頭の中にバグが? そして、それが玉藻前の力をなんで奪っていくんだ?



「豆羽ミラキジェスさんが弄った際に移ったバグ……。全部、消したと思ったんですが、生き残りが居たようで、それが玉藻前の力を奪っていったんです」



「つまりは……そのバグを倒すために、僕を呼んだと?」



 夢姫だけでは、対処出来なかったんだろうか?



「私の力は現在の姫ちゃんの2年後を想定して作られていまして、姫ちゃんよりも技術的に上に立つ事は出来ても、強大な力の対処は出来ないんです。

 玉藻前の力を取り込んだ、あのバグは私の力量を越えています。ですから、朝比奈さんと言う助っ人が必要なのです」



 つまりは、

 ・【前】の印の能力で、玉藻前と団三郎狸の力を姫は取り込もうとした。

 ・しかし、姫の頭の中にあったバグが、玉藻前の力を取り込んだ。

 ・夢姫だけでは対処が出来ない。

 ・助っ人として、僕が呼ばれた。

 と言った所だろうか?



 けれども……



「それだったら、ユリーや月裏さんを呼んだ方が良かったんじゃ……。それに、近くにリリーベルさんやナギサ・クジョウも居たし……」



 僕1人だけでなく、彼女達も呼べばもっと早く倒せると思うのだが。



「いやー……。あのですね、朝比奈さん。私もそう思いますが、姫ちゃんの頭の中に入れるのは1人だけなんです。

 ですから、朝比奈さんを呼んだんです。姫ちゃんが、一番大切に思っている人ですから」



「そ、そうか?」



「とにかく、姫ちゃんの力を奪ったバグを追いましょう。こっちです」



 と、夢姫は僕の手を掴んで、そこへと案内する。僕は夢姫に連れられるまま、この夢世界の奥へと進んで行った。









「……夢の世界で、2人きり。それが姫ちゃんと、私が一番嬉しいんですから。他の人なんて要れないに決まってるじゃないですか」

【夢姫】

 夢の世界の姫。現実世界の姫よりも、肉体的にも精神的にも2年年上に設定されている。姫と基本的に好みは一緒。現実世界の姫を、『姫ちゃん』と呼んでいる。

 姫の脳内管理を引き受けており、姫の効果的な攻撃をサポートするのが役目。今回は、バグ退治のために朝比奈を夢の世界に連れ込んだ。



【姫の夢の世界】

 姫の頭の中に広がる、夢の世界。夢姫が住んでおり、姫のあらゆる事が記録、管理されている。秋の風景なのは、彼女が最も安らぐ季節だから。

 夢姫が許可した人物のみがこの世界に来る事が出来て、人数制限は存在しない。

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