黄金色の世界の朝比奈
―――――この子が、あの子の、なのかしら? なんだか冴えない奴ね。しかも、あまつさえそれが人だなんて……。
―――――母さん、あの子が選んだんだから、あの子のお眼鏡に適う部分があったんだろうて。
――――――けど、やっぱり心配なのよ。確かに妾はお前さんと出会う前に、この子と同じく、人間に恋をしていた時もあったけど、それでも裏切られたし。
――――――大丈夫だろう。あの子も、もう1人で色々と選ぶ年頃だ。もう自分で色々と判断出来るさ。
―――――――けどね……。あの子と過ごした時間は短いし、それに妾はあの子にこんな重みを背負わせるだなんて……。
―――――――それを言うなら、俺もそうだよ。呪いもほとんど薄いとは言っても、こんなのを背負わせるのは心苦しい。
―――――――――そうよね……。
―――――――だから、テストをする事に決めたんだろう? このテストに合格するか、否か。それによって、答えを出すと。
―――――――妾も納得はしたけど……。けど、大丈夫かな? うちの子は少し、子供っぽい一面もあるしね。
―――――――大丈夫だよ。子供ってのは、親が見ていない所で、着実に成長している物さ。
――――――そう……よね。じゃあ、そろそろこの男を起こしましょう。いい加減、起こさないと、朝を迎えてしまって、意味が無くなってしまうわ。ほら、お前さん。そろそろ睡眠を解除しておくれ。
―――――――へいへい。
☆
「う、うぅ……」
なんだか、頭の中で見知らぬ男と、女の声が聞こえていたと思ったら、急に眠気が吹き飛んだ。紅葉を探して魔王場やスミガタケ、色んな場所を探し回り、疲れて皆と一緒にぶっ疲れて眠気はバリバリあったのに、それが全部消えてしまったのだ。しかも、唐突に。
眠気が全然襲って来ずに寝れないから、目を覚ました。そして、後悔した。
「どこだ、ここ……」
目を覚ますと、そこは明らかに寝る前とは違う光景が広がっていた。
黄金色のススキが辺り一面に広がる野原。赤や黄色などの色に色付いて紅葉している木々。そして赤い夕焼け空。それが秋の、普通の秋の風景だったら、どんなに良かっただろう。
けれども、赤い夕焼け空に大きく黒い文字で『いかせのめひ』と書かれているのを見たら、ここが普通の世界でない事は明白である。
「い、か、せ、の、め、ひ……。逆から、読んだ通りだろうな、これ」
『ひめのせかい』。
理屈も減ったくれも無いんだけれども、どうやら僕は姫の世界に迷い込んでしまったみたいである。どうしてこんな事になったのか、こっちが聞きたいくらいだ。
僕はとても困り果てていた。